訪問リハビリで年収は上がる?PT・OT・ST別に比較

看護師
訪問リハビリで高齢者のリハビリを行う日本人理学療法士

病院勤務のPT・OT・STが訪問リハビリへの転職を考えたとき、最初に気になるのは「実際に年収は上がるのか、下がるのか」という数字の問題だろう。

PT・OT・STの3団体は2025年に合同実態調査を公表。全産業平均年収431.5万円(2024年実績)に対し、3療法士は390.5万円以上を賃上げ後の最低ラインとして目標に掲げている状況だ。

ただし、平均値だけで判断するのは危険だ。訪問リハビリの年収は、勤務先の形態・手当構造・インセンティブ制度・地域区分によって大きく変動する。「平均が低いから訪問は不利」とも「訪問なら誰でも収入が上がる」とも言い切れない。

さらに見落とせない構造的な制約がある。訪問リハビリテーションは現行制度上、介護職員等処遇改善加算の対象外だ(厚生労働省)。令和8年度改定での対象追加が対応案として示されているが、現時点では加算の恩恵が直接届かない職場も多い。

「平均年収」だけではわからない訪問リハビリの給与構造

訪問リハビリの給与は「基本給+訪問手当+インセンティブ+各種手当」で構成されるのが一般的だ。病院と異なり、訪問件数や稼働率が給与に直結する職場も多い。つまり基本給の比較だけでは実態は見えてこない。

具体的な相場と年収を左右する要因を、次の章から詳しく見ていきましょう。

訪問リハビリ年収の職種別相場|PT・OT・STのデータを読む

PT・OT・STの年収データを比較確認する医療専門職

PT・OT・STの賃金基準と全産業平均との比較

先ほど触れた390.5万円という数字を、職種別に掘り下げてみましょう。

厚生労働省「職業安定業務統計の求人賃金算定基準」では、経験0年時点の基準値(時間額の可能性があり、月収・年収への単純換算はできない参考値)として以下が示されています。

職種 経験0年 経験10年 経験20年
PT(コード144) 1,363円 2,145円 2,682円
OT(コード145) 1,335円 2,101円 2,627円
ST(コード146) 1,308円 2,059円 2,574円

PT>OT>STの順でやや差はありますが、大幅な開きではありません。訪問リハビリ年収を職種だけで判断する根拠としては限定的です。

医療施設と介護施設でベースアップに差がある現実

3団体合同実態調査(2025年公表)によると、2023年6月〜2025年6月の2年間でベースアップがあった施設の割合は以下の通りです。

  • 医療施設(n=652):74.1%
  • 介護施設(n=141):60.4%
  • 障害福祉施設(n=227):58.9%

訪問リハビリは介護保険領域で提供されるケースが多く、60.4%という介護施設の数値が一つの目安になりえます。さらに、医療施設で昇給があった施設のうち「月1万円未満」が76%を占めており、大幅な賃上げには至っていない傾向があります。

介護報酬改定と処遇改善加算の動向|訪問リハビリ年収への構造的影響

訪問リハビリの算定単位と1件あたりの報酬

訪問リハビリテーションは1回20分を1単位とし、通常2単位(40分)が標準的な提供形態です。令和6年度の疾患別リハビリテーション料(医療保険)の現行点数は以下の通りです(3団体合同実態調査資料より)。

区分
脳血管疾患等 245点 200点 100点
運動器 185点 170点 85点
呼吸器 175点 85点

療法士1人あたりの算定上限は1日18単位標準・24単位上限・週108単位(令和7年度第9回入院・外来医療等の調査・評価分科会資料より)。リハビリテーションマネジメント加算や訪問リハビリテーション実施計画書に基づく加算も事業所収益を支えます。また、地域区分(1級地〜その他)によって1単位あたりの単価が異なるため、同じ件数でも地域で収益に差が生じます。

処遇改善加算「対象外」という構造的課題

訪問リハビリ年収を語るうえで見落とせない問題があります。現行制度では、訪問リハビリテーションは介護職員等処遇改善加算の算定対象外です(厚生労働省「介護人材確保に向けた処遇改善等の課題」)。

処遇改善加算を取得している施設でも、PT・OT・ST又は機能訓練指導員への配分実績は42.5%にとどまっています(厚生労働省 処遇改善加算算定状況調査)。

一方で、令和7年度補正予算では1,920億円(補助率10/10)の「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が措置されており(介護保険最新情報Vol.1448・1460)、訪問リハビリ事業者も「処遇改善加算に準ずる要件を満たす事業者」は対象となります。さらに令和8年度改定では訪問リハビリテーションを処遇改善加算の対象に加える方向性が対応案として提示されています。ただし、現時点では確定事項ではありません。

インセンティブ制度(出来高制)の仕組みと注意点

訪問リハビリ事業所の多くが採用するインセンティブ制度では、一定の訪問件数を超えた分について1件あたり数千円の手当が加算される仕組みが一般的です。常勤換算1人あたりの介護保険訪問対象者数は平均10.8人・中央値9.7人(日本訪問看護財団 訪問看護サービス提供体制強化に向けた調査研究事業報告書、2025年)が参考値になります。

求人票に「固定残業代◯時間分を含む」と記載がある場合、見かけの月給が高くても実質的な時間単価が低い可能性があります。固定残業代(みなし残業)の有無と時間数は必ず確認してください。

訪問リハビリ年収を左右する条件と見落としやすい落とし穴

訪問リハビリスタッフが書類業務やタブレットで記録を行う場面

訪問手当・住宅手当・職能手当の有無

基本給に加え、訪問手当(1件あたり型・月額定額型の2パターン)、住宅手当、認定資格に連動する職能手当の有無が年収に直結します。手当の組み合わせによって年間数十万円の差が生じうるため、求人票の基本給だけで比較するのは危険です。

退職金制度と生涯賃金の視点

訪問リハビリ事業所は中小規模の法人が多く、退職金制度がない事業所も存在します。退職金の有無によって生涯賃金で数百万円の差が生じうる可能性があります。年収の額面比較だけでなく、退職金制度の確認も必須です。

医療保険・介護保険法の違いと特定疾患対応の収益構造

健康保険法(医療保険)適用で訪問リハビリを提供するケースと、介護保険法下で提供するケースでは報酬単価や算定要件が異なります。神経難病等の特定疾患の利用者が多い事業所では医療保険適用の訪問が増え、介護保険外の収益が経営を支える側面があり、給与水準に反映される可能性があります。また、訪問看護ステーション設置基準を満たして療法士を雇用するケースと、病院・診療所が直接運営するケースでは経営母体の収益構造が異なり、給与にも影響しうる点を把握しておきましょう。

書類業務と「見えない労働時間」

訪問リハビリではADL(日常生活動作)評価、訪問リハビリテーション実施計画書の作成、サービス担当者会議への出席など、訪問以外の業務が発生します。令和6年度介護報酬改定効果検証調査(厚生労働省、n=6,875)によると、超過勤務は平均4.62時間/月と少ない一方、書類業務が訪問件数を圧迫し、インセンティブ収入を下げる構造があります。ICTツール(電子カルテ・タブレット)の導入状況が稼働率の差に直結する可能性があります。

訪問リハビリ年収は今後どうなるか|2つのシナリオ

賃上げが進む可能性があるシナリオ

  • 令和8年度に処遇改善加算の対象に追加された場合、制度的な賃上げ枠組みに組み込まれる可能性があります
  • 令和7年度に訪問看護ステーションの66.1%が賃上げ実施済み(訪問看護財団調査、n=2,050)
  • 春季生活闘争2025年の賃上げ率5.25%(全体)・4.65%(300人未満)が介護分野に波及する可能性があります

伸び悩むリスクがあるシナリオ

  • 加算対象拡大が見送られた場合、処遇格差が続く可能性があります
  • 介護施設のベースアップ実施率60.4%は医療施設74.1%を下回っており、ペースが遅い傾向があります
  • リハビリ職の毎年の養成数増加が賃金上昇を抑制する構造的要因になりうる可能性があります
  • インセンティブ依存型では利用者キャンセル時に収入が変動するリスクがあります

訪問リハビリに向いている人・向いていない人

向いている人 向いていない人
1人で判断・行動できる 固定給を最優先にしたい
時間管理が得意 常にチームでディスカッションしたい
ADL評価・生活期リハを楽しめる 急性期スキルを磨き続けたい
件数を積む働き方にやりがいを感じる 書類業務(実施計画書・サービス担当者会議記録等)が苦手
移動を含む裁量ある働き方が好き 天候や移動距離のストレスが大きい

よくある質問

Q1. 訪問リハビリ年収500万円は現実的ですか?

全産業平均431.5万円、3療法士の目標水準390.5万円以上という状況を踏まえると、500万円は「全体平均」としては高い水準です。インセンティブ制度が充実した事業所で件数をこなし、管理職手当がつく場合に到達できる可能性があります。1級地等の都市部で単価が高い地域区分の事業所が有利な傾向があります。「条件が揃えば到達しうる上限帯」という位置づけです。

Q2. 訪問看護ステーション所属と訪問リハビリ事業所勤務で年収に差はありますか?

介護保険法上の訪問リハビリテーションは、訪問看護ステーション設置基準を満たした事業所が療法士を配置するケースと、病院・診療所が直接運営するケースがあります。大規模法人(病院系列)は退職金・福利厚生が整っている傾向があります。訪問看護ステーション系はインセンティブで短期的年収を伸ばしやすい傾向があります。介護労働実態調査(令和6年度)によると、介護分野に転職したPT・OT・STの53.0%(n=317)の直前職は医療関係であり、医療機関からの転職が半数超を占めます。

Q3. 転職して「年収が下がった」のはどんなケースですか?

  • 夜勤・当直手当がなくなり手取りが減るケース
  • 固定残業代込みの求人で時間単価が実質低いケース
  • 新設事業所で訪問件数が確保できないケース
  • 退職金制度がなく生涯賃金で損失が生じるケース

これらを事前に把握することで、求人選びの精度を高めることができます。

転職前に確認すべき5つのアクションプラン

訪問リハビリへの転職前に条件を確認する理学療法士

訪問リハビリ年収は求人票の基本給だけでは判断できません。面接・内定前に以下を必ず確認してください。

  1. 給与内訳を分解する(基本給・訪問手当・固定残業代・インセンティブの比率)
  2. 1日平均訪問件数と稼働率を質問する(新設か既存事業所かも確認)
  3. 処遇改善加算の取得状況と職員への配分方法を確認する
  4. 退職金制度・昇給実績の有無を確認する
  5. 地域区分と特定疾患利用者の比率を確認する(医療保険適用の有無で単価が変わる)

年収の数字だけで判断せず、手当・制度・将来性を含めた総合条件で比較することが重要です。この記事で整理した情報をもとに、自分にとって納得できる条件かどうかを確認したうえで判断してください。

参考文献・引用データ

本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。

この記事の監修者
株式会社ゴルディロックス
代表取締役 / 理学療法士龍嶋 裕二(Yuji Ryushima)

理学療法士として大学病院にて超急性期から緩和ケアまで多岐にわたる臨床を経験。2013年に独立し、株式会社ゴルディロックスを設立。 現在、リハビリ特化型デイサービスや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等複数の事業を経営。またクリニックの運営やプロアスリートから子供の身体発育までをサポートするパーソナルトレーナーとしても活動中。医学的知見に基づいた地域密着型のヘルスケア環境づくりを牽引している。

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