訪問看護PTの減算、自分の給与にどう響く?2024年改定の全減算項目と働き方への影響を整理

看護師
訪問看護ステーションのデスクで2024年改定資料を確認する理学療法士

「自分の給与、下がるのか——」

2024年度の介護報酬改定で、PT等による訪問の基本報酬は297単位→293単位(介護予防は287→283単位)へ引き下げられました。さらに見逃せないのが、1日2回を超えた訪問への減算率。改定前の▲10%(90/100)から、改定後は▲50%(50/100)へと大幅に強化されています。

ただし、「減算=即・給与ダウン」と単純化するのは早計です。影響の大きさは、事業所の看護師比率・PT訪問への依存度・利用者の要介護度構成によって大きく異なります。

一方、収益を補填する仕組みも存在します。看護体制強化加算(Ⅰ:550単位/月、Ⅱ:200単位/月)や、令和6年度新設の訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)780円/月などがその代表例です。体制が整った事業所では影響を最小限に抑えられる一方、整備が遅れている事業所では厳しい現実もあります。

自分の働き方にどこまで影響するのか、具体的に見ていきましょう。

市場の事実:PT訪問の単位数引き下げと減算強化、数字で見る2024年改定の全体像

2024年改定の単位数データを看護師と理学療法士が共同で確認している場面

基本報酬の改定額

訪問看護費(指定訪問看護ステーション①)の改定内容は以下の通りです(厚生労働省・001123919.pdf)。

訪問者 区分 現行 改定後 差分
看護師 20分未満 312単位 313単位 +1
看護師 30分未満 469単位 470単位 +1
看護師 30分以上1時間未満 819単位 821単位 +2
看護師 1時間以上1時間30分未満 1,122単位 1,125単位 +3
PT等 訪問看護 297単位 293単位 ▲4
PT等 介護予防訪問看護 287単位 283単位 ▲4

看護師の訪問は微増、PT等は引き下げ。方向性が正反対です。これは厚労省が訪問看護ステーションを看護師中心の体制へ誘導しようとする政策意図の表れと考えられます。

最大の影響:1日2回超の減算率が50/100へ強化

改定前:1日2回超の訪問は90/100(▲10%/回)
改定後:同じ条件が50/100(▲50%/回)

計算値として示すと、293単位の50%は約147単位です。改定前は297単位×90%=約267単位だったため、1回あたり約120単位の差が生じる見込みです。1日3回以上のPT訪問を組んでいた事業所への影響は特に大きくなる可能性があります。なお、週6回の訪問回数制限(1回20分以上)は従来通りです。

PT等の構成比と市場動向

令和3年時点の従事者構成(常勤換算)は、看護職員69.9%・理学療法士等22.0%・その他8.1%です(厚生労働省・001103292.pdf)。PT等の割合は、平成13年頃の約91%から低下していた看護職員比率の裏返しで拡大してきました(同・0000170290.pdf)。制度側の「適正化」は、この拡大傾向への対応です。ただし、中医協の議論では訪問看護利用者の後期高齢者割合が7割以上に達する見込みで、198の二次医療圏で2040年以降に需要ピークを迎えるとされており(厚生労働省・001141091.pdf)、PT訪問の需要自体が消えるわけではありません。

制度の事実:2024年改定で新設・変更された減算・加算を総整理

PT訪問に直接関わる減算項目

①理学療法士等訪問回数超過減算(1日2回超→50/100):上述の通りです。

②12月超減算:PT等の訪問が12か月を超えて継続される場合に適用されます。訪問看護計画書に基づき看護師が定期的なアセスメントを行い、リハビリ継続の必要性を記録・更新することが要件上重要です。

③同一建物減算:同一建物内の複数利用者を連続訪問した場合に適用されます。集合住宅への訪問が多い事業所では収益への影響が出やすい構造です。

④准看護師による訪問減算:医療保険では▲500円(厚生労働省・001103292.pdf)。PT本人には直接関係しませんが、事業所全体の収益を圧迫するため、賞与・処遇に間接的に波及する可能性があります。

事業所全体に関わる減算:BCP未策定・高齢者虐待防止措置未実施

業務継続計画(BCP)未策定減算、高齢者虐待防止措置未実施減算はPT個人の問題ではありません。しかし事業所収益を圧迫し、給与・賞与に影響しうる構造です。転職先を選ぶ際には、BCP策定状況や虐待防止体制の整備状況も確認すべきポイントの一つです。

収益を支える加算項目

看護体制強化加算(改定後:Ⅰ550単位/月・Ⅱ200単位/月、厚生労働省・001123919.pdf)は、看護職員の体制が前提条件です。PT主体の事業所では取得しにくい構造になっています。

専門管理加算・緊急時訪問看護加算・口腔連携強化加算・ターミナルケア加算など多角的な加算を持つ事業所は、減算の影響を吸収しやすい傾向があります。24時間対応体制加算は改定後、看護業務負担軽減の取り組みあり6,800円/月・なし6,520円/月(現行6,400円/月)へ引き上げられており(厚生労働省・001251538.pdf)、体制整備へのインセンティブが強化されています。

また、令和6年度新設の訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)780円/月(厚生労働省・001252076.pdf)の対象には、PT・OT・STも含まれます。賃上げの制度的後押しは存在します。科学的介護情報システム(LIFE)の活用も、今後の加算取得要件として重要性が高まる可能性があります。

現場の事実:減算時代にPTが訪問看護で生き残るための実務戦略

在宅で看護師と理学療法士が高齢者のリハビリ計画を共同でアセスメントしている場面

看護師との共同アセスメント体制がカギ

12月超減算を回避しつつ質を維持するには、看護師とPTが訪問看護指示書に基づき共同でアセスメントを行う体制が不可欠です。看護の視点を含むリハビリテーション実施計画書を作成し、ケアマネジャー(介護支援専門員)との連携のもと計画を適正化する流れが求められます。「PTが単独でリハビリを回す」スタイルから、「看護師と定期的にアセスメントを共有し、看護計画と一体化したリハビリを提供する」スタイルへの転換が、制度的に求められています。

海外の研究では、膝関節形成術後の在宅リハビリテーションは外来リハビリテーションと同等の効果・安全性を示し、費用対効果が高いと報告されています(Zhao et al., Journal of Orthopaedic Surgery and Research, 2023)。また、軽度フレイル高齢者への在宅健康増進介入は安全かつ費用対効果の高い介入と報告されています(Walters et al., The Lancet Healthy Longevity, 2025)。対象や介入モデルが異なるため日本の訪問看護PTへの直接的な一般化は難しいものの、「在宅でのリハビリには一定のエビデンスがあり、制度的に適正な形で提供することが重要」という示唆を与えます。

訪問比率の月次・四半期管理

リハビリ超過減算は前年度実績に基づいて判定されます。月次・四半期単位で看護職員とPT等の訪問回数バランスを管理することが重要です。年度末に看護師の訪問を無理に増やして帳尻合わせをするような対応は、サービスの質低下につながる問題が一般的に指摘されています。早期から計画的に管理することが現実的な対策です。

医療保険と介護保険の境界線

医療保険におけるPT等の訪問看護基本療養費は5,550円(3人以上の場合2,780円、厚生労働省・001103292.pdf)で、介護保険の293単位とは異なる算定体系です。特別訪問看護指示書が発行された場合や、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者への訪問は医療保険が適用されるため、介護保険の減算ルールとは別枠になります。ただし、「医療保険なら減算を免れる」という単純な理解は危険です。医療保険にも独自の制約があるため、適用ルールを正確に確認したうえで運用することが求められます。

2025年以降の見通し——ポジティブシナリオとリスクシナリオ

ポジティブシナリオ:協働型PTは引き続き重宝される可能性

198の二次医療圏で2040年以降に需要ピークを迎える見込みであり(厚生労働省)、在宅リハビリの需要は中長期的に拡大する可能性があります。看護師との共同アセスメントを実践できるPTは、引き続き重宝される傾向があると考えられます。訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)780円/月の新設に見られるように、処遇改善の制度的枠組みも整備されつつあります。

リスクシナリオ:PT訪問依存型の事業所では雇用調整が進む可能性

PT等の構成比が高く、看護体制強化加算を取得できていない事業所では、減算の累積により経営が厳しくなり、PT雇用の縮小や給与引き下げが行われるリスクがあります。営利法人による訪問看護ステーションが増加傾向にある中(厚生労働省)、PT訪問を収益の柱としていた事業所ほど改定の影響を受けやすい構造です。事業所選びを誤ると、減算の影響を個人の給与で吸収させられる可能性があります。

訪問看護PTに向いている人・向いていない人——適性チェック

<向いている人>

  • 看護師・ケアマネジャーとの多職種連携に抵抗がない
  • 利用者の生活全体をアセスメントする視点を持てる
  • 書類作成・記録業務を丁寧にこなせる
  • 制度改定の動向を自ら追える
  • 転職前に加算取得状況・看護師配置体制を確認する習慣がある

<慎重に検討すべき人>

  • リハビリだけに集中したい志向が強い
  • 報酬制度の仕組みに関心を持てない
  • 看護師との役割分担・情報共有に煩わしさを感じる
  • 給与条件だけで転職先を決めようとしている

よくある質問(FAQ)

Q1. 給与は実際にどのくらい下がる可能性がありますか?

一律に「○万円下がる」とは言えません。基本報酬の▲4単位(293単位)は1回あたりの影響は小さいものの、1日2回超の減算率が90/100→50/100へ強化された影響は、該当する訪問パターンがある場合に大きな減収要因になりえます。固定給か否か、PT訪問の比率がどの程度かによっても異なります。転職前に「PT訪問1件あたりのインセンティブ計算方法」と「事業所全体の減算リスク」を必ず確認してください。

Q2. 医療保険のPT訪問なら減算の影響を受けないのですか?

医療保険のPT等の訪問看護基本療養費は5,550円(3人以上は2,780円)であり、介護保険の単位数減算とは別の算定体系です。ただし医療保険にも週3日までといった独自の制約があります。「医療保険に切り替えれば問題ない」という理解は誤りです。適用ルールを正確に確認したうえで運用してください。

Q3. 長く働き続けるために最も重要なことは何ですか?

「看護の視点を含むアセスメント能力」の獲得です。制度が求めているのは、PTが看護師の代わりに訪問するモデルではなく、看護師と協働して質の高いリハビリを提供するモデルです。LIFEの活用スキルやBCP・虐待防止措置への参画も、PTとしての価値向上につながる可能性があります。

まとめ——自分ごととして整理するためのアクションプラン

訪問看護ステーションで今後のキャリアプランを前向きに検討する理学療法士
  • ①情報収集:本記事で整理した減算・加算項目を手元に置き、自分の事業所(または転職検討先)の該当状況を確認する。
  • ②体制確認:看護体制強化加算の取得状況・BCP策定状況・PT訪問と看護師訪問の比率・24時間対応体制加算の取り組み状況を具体的に確認する。
  • ③キャリア判断:「減算の影響を吸収できる体制か」「看護師との協働に前向きに取り組めるか」の2軸で判断し、納得できる条件が揃ってから行動に移す。

「減算=訪問看護PTはオワコン」と結論づけるのは早計です。同時に「大丈夫だろう」と楽観視するのもリスクがあります。正確な制度理解と事業所選びが、今後のキャリアを左右する可能性があります。

参考文献・引用データ

本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。

この記事の監修者
株式会社ゴルディロックス
代表取締役 / 理学療法士龍嶋 裕二(Yuji Ryushima)

理学療法士として大学病院にて超急性期から緩和ケアまで多岐にわたる臨床を経験。2013年に独立し、株式会社ゴルディロックスを設立。 現在、リハビリ特化型デイサービスや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等複数の事業を経営。またクリニックの運営やプロアスリートから子供の身体発育までをサポートするパーソナルトレーナーとしても活動中。医学的知見に基づいた地域密着型のヘルスケア環境づくりを牽引している。

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