訪問リハビリ1日の件数は何件?標準と時間配分

看護師
訪問リハビリに向かう理学療法士が住宅街でリハビリバッグを持ち立っている様子

訪問リハビリへの転職を考えるPT・OTにとって、1日に何件回るのかは最も気になるポイントだろう。

病院勤務と異なり、訪問リハビリでは移動時間・記録業務・サービス担当者会議への参加など、純粋なリハビリ以外の業務が1日の大きな割合を占める。「件数が多い=忙しい」とも限らず、事業所の規模・配置人数・地域・移動手段によって体感の負荷は大きく異なる。

厚労省の令和元年度調査(N=181事業所)によれば、1日の訪問件数が1〜5件の事業所は45%にのぼる。ただし、これは事業所全体の件数であり、セラピスト1人あたりの件数とは異なる点に注意が必要だ。

「1日何件が普通?」への回答は事業所規模で大きく変わる

訪問リハビリの1日件数の分布(令和元年度、N=181)は以下の通りだ。

1日件数 割合
1〜5件 45%
6〜10件 25%
11〜15件 12%
16〜20件 5%
21件以上 9%

70%の事業所が1日10件以下である一方、21件以上の事業所も9%存在する。なお、本データは全国4,614事業所(平成31年4月審査分)の一部サンプルであり、全国の実態を代表するものではない。

件数が少ない事業所が楽とは言い切れない。事業所選びが、働き方を大きく左右する。具体的な制度要因と時間配分を次の章で解説する。

訪問リハビリテーション事業所と訪問看護STで件数の組み立て方は異なる

訪問看護ステーションで看護師と理学療法士が1日の訪問スケジュールを確認している様子

2つの事業所形態とPT・OT・STの配置数

訪問リハビリに従事するルートは主に2つある。

訪問リハビリテーション事業所は、病院・診療所が81%、介護老人保健施設が19%を占める(厚労省・第182回介護給付費分科会資料、平成31年4月審査分)。専任の常勤医師1名以上の配置が必須で、介護保険法に基づくサービスだ。

訪問看護ステーション(ST)では、PT・OT・STが訪問看護師と混在して勤務する。常勤換算の職種別割合は看護師63.7%、PT14.8%、OT6.4%、ST1.3%(厚労省「令和5年介護サービス施設・事業所調査」)。PTが在籍する訪問看護STは全国2,830施設にのぼる(日本理学療法士協会、2025年3月末・休会者除く)。

1事業所あたりの常勤換算数(令和元年度調査、N=360)は以下の通りだ。

職種 1事業所あたり常勤換算数
PT 2.91人
OT 1.18人
ST 0.37人

仮に事業所の1日件数が8件でPTが2.91人いれば、単純計算で1人あたり約2.7件となる。ただし、これは参考値であり、勤務形態や業務分担によって実際は異なる。

訪問看護STでは、リハ職の訪問割合が看護職との比率で制約を受ける場合があり、事業所形態によって訪問リハビリ1日件数の組み立て方が変わる点を理解しておきたい。

1日件数を左右する制度と2024年度介護報酬改定のポイント

2024年度介護報酬改定の資料を確認する訪問リハビリ事業所スタッフ

基本報酬307単位・週6単位制限の構造

令和6年度介護報酬改定後、訪問リハビリテーションの基本報酬は307単位/回(1回20分以上)だ(出典:厚労省 令和6年度介護報酬改定資料)。

算定上限は通常週6回(=週120分)。退院・退所日から3か月以内は週12回まで算定可能(令和6年度改定で追加)。

1回の訪問で40分(2単位)提供するケースでは、週6単位÷2単位=週3回が上限となる計算だ。退院直後の利用者は週12回まで算定できるため、その時期はセラピストの1日件数が集中しやすい傾向がある。

短期集中リハビリテーション実施加算(+200単位/日)は事業所の34.03%が算定しており(令和4年4月審査分)、退院直後利用者の訪問頻度を押し上げる要因になりうる。

同一建物減算・診療未実施減算が件数計画に与える影響

項目 内容
同一建物減算 △10%/回(50人以上は△15%/回)
診療未実施減算 △50単位/回(令和6年度改定で△20→△50に強化)
サービス提供体制強化加算Ⅰ +6単位/回(事業所算定率70.17%)
移行支援加算 +17単位/日(事業所算定率20.11%)

サービス付き高齢者住宅等への集中訪問は件数が増えやすい反面、単価が下がる構造だ。診療未実施減算の強化により、リハビリテーション実施計画書の作成・医師との連携・サービス担当者会議への出席がセラピストの業務時間を圧迫し、訪問リハビリ1日件数を実質的に制限する要因になりうる。

一般的な傾向として、午前3件・午後3件の計6件が1日の目安とされるケースが多い。移動時間(在宅間移動)は都市部と地方で大きく異なり、担当エリアが広い場合は4〜5件にとどまる場合もある。

ICT活用・ルート最適化で1日の訪問件数はどう変わるか

記録業務の削減と移動手段の選択

訪問リハビリの1日業務のうち、記録・移動・会議が占める時間は無視できない。ICTツール(音声入力・タブレット記録)の活用により、訪問先での記録入力や移動中の音声メモが事務作業時間を削減しうる傾向がある。公的統計にICT導入率の数値はないが、導入事業所では移動合間の記録業務が効率化され、同じ労働時間でも訪問件数増加の余地が生まれる可能性がある。

移動手段の選択も件数に影響しうる。

移動手段 都市部 郊外・地方
電動自転車 駐車場探し不要・小回り有効 訪問エリアが広いと非現実的
車両 渋滞・駐車で時間ロスが生じやすい 必須。1日4〜6件が現実的な目安

事業所の採算ラインと件数の関係

事業所経営の観点では、人件費率が高い訪問系サービスは損益分岐点が比較的高い傾向がある。セラピスト1人が1日5〜6件を確保できれば採算に乗りやすいとされるが、加算取得状況・移動コスト・非訪問業務の量によって変わるため、単純に件数だけで評価はできない。

「件数が増える=良い」とは限らない。リハビリの質の維持と件数のバランスが、セラピスト個人にとっても事業所にとっても重要な視点だ。

訪問リハビリの1日件数から見る将来見通し

需要拡大が見込まれるシナリオ

令和6年度改定で退院後3か月以内の週12回特例が追加された背景には、在院日数短縮による在宅復帰後のリハビリ需要増がある。高齢化の進行とともに訪問リハビリの需要はさらに拡大する可能性があり、事業所数も増加傾向にある。ただし、需要増がセラピスト1人あたりの訪問リハビリ1日件数増に直結するかは、事業所の採用体制次第の面があります。

件数偏重で消耗するリスクシナリオ

件数ノルマが過度に高い事業所では、移動と記録に追われてリハビリの質が低下し、セラピスト自身も疲弊するリスクがあります。令和6年度改定で診療未実施減算が△20→△50単位/回に強化された結果、医師との連携・計画書作成に時間を割けない体制の事業所は収益面でも不利になりうる構造です。

訪問リハビリに向いている人・向いていない人

訪問リハビリで高齢者の自宅にて理学療法士がリハビリを実施している様子

【向いている人】

  • 利用者宅での単独対応・自己判断に抵抗がない
  • 移動込みのタイムマネジメントが得意
  • 生活環境全体を見てリハビリ計画を立てることに関心がある
  • サービス担当者会議・ケアマネ連携など多職種スタイルに適応できる

【慎重に検討すべき人】

  • 常に同僚がそばにいる環境が安心の源になっている
  • 1日の件数が天候・キャンセルで変動することに強いストレスを感じる
  • 車・自転車での移動が苦手、または体力面に不安がある
  • 移動合間に記録業務をこなすことが苦痛になる

「向いていない=ダメ」ではなく、ICT活用や訪問エリア設計次第で軽減できる項目もあります。

よくある質問

Q1. 訪問看護STとリハビリ専門事業所では1日の件数に違いはありますか?

訪問看護STでは看護職との業務バランスや、看護体制強化加算(看護職中心の体制を要件とする加算)の影響でリハ職の訪問件数が制約される場合があります。訪問リハビリテーション事業所はリハ特化型のため、セラピストの1日件数が多くなる傾向があります。医療保険で訪問する場合は訪問看護指示書が必要で、別表第七(厚生労働大臣が定める疾病等)に該当する利用者や特別訪問看護指示書発行ケースでは訪問頻度が異なりうる点も確認が必要です。

Q2. 訪問リハビリの1日件数が少ない日・キャンセルが出た日はどうなりますか?

訪問系サービス共通の課題として、天候や利用者の体調でキャンセルは発生しえます。その時間はリハビリテーション実施計画書の作成・報告書整理・他職種との連絡調整に充てるのが一般的です。事業所によってキャンセル時の対応方針(別利用者への振替・事務作業充当など)が異なるため、転職前の確認ポイントの一つです。

Q3. 訪問リハビリの1日件数にノルマはありますか?厳しい事業所の見分け方は?

制度上のノルマは存在しませんが、採算ラインとしてセラピスト1人あたりの件数目安を設ける事業所が多い傾向があります。面接で「1日の平均件数」「移動手段の支給」「記録方法(紙 vs ICT)」「サービス担当者会議の頻度」「診療未実施減算回避のための医師連携体制」を具体的に質問すると、事業所の実態が見えやすくなります。

まとめ

訪問リハビリの1日件数は、事業所規模・配置人数・地域・移動手段によって大きく異なります。全体の70%の事業所が1日10件以下ですが、セラピスト1人あたりの件数はさらに少ない場合があります。「楽」「きつい」と安易に断定するより、件数・移動・記録体制・医師との連携状況を転職前に具体的に確認することが重要です。複数の事業所を比較し、見学や面接で上記のチェックポイントを確認した上で、納得できる事業所を選ぶことをお勧めします。

参考文献・引用データ

本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。

この記事の監修者
株式会社ゴルディロックス
代表取締役 / 理学療法士龍嶋 裕二(Yuji Ryushima)

理学療法士として大学病院にて超急性期から緩和ケアまで多岐にわたる臨床を経験。2013年に独立し、株式会社ゴルディロックスを設立。 現在、リハビリ特化型デイサービスや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等複数の事業を経営。またクリニックの運営やプロアスリートから子供の身体発育までをサポートするパーソナルトレーナーとしても活動中。医学的知見に基づいた地域密着型のヘルスケア環境づくりを牽引している。

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