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訪問リハビリの給料の内訳:基本給・インセンティブ・固定残業代を理解する

訪問リハビリの給料は「基本給+各種手当+インセンティブ」で構成されるのが一般的です。年収の幅が400万〜600万円と広いのは、この構成要素が事業所ごとに大きく異なるためです。
インセンティブ制度は、月間訪問件数が一定数を超えると1件あたり数千円が上乗せされる仕組みが多く見られます。一般的な傾向として1件2,000〜4,000円程度とされますが、設定のない事業所も存在します。
固定残業代(みなし残業)にも注意が必要です。「月給30万円(固定残業代40時間分含む)」のように記載される求人では、基本給が実質的に低くなる場合があります。求人を比較する際は、基本給の部分を必ず確認してください。
移動時間と訪問件数の関係も収入に直結します。1日の訪問件数は5〜7件程度が一般的な傾向とされますが、移動時間が長い地域では実質労働時間が増える一方、件数が伸びず収入が頭打ちになる場合があります。
非常勤(時給・件数制)と正社員:収入の安定性の違い
| 雇用形態 | 時給・単価の目安 | 社会保険 | 賞与・昇給 |
|---|---|---|---|
| 正社員 | 月給制 | 事業所と折半 | あり(業績連動型が多い) |
| 非常勤 | 1,800〜2,500円/時が相場 | 自己負担の場合あり | 原則なし |
賞与(業績連動型)は事業所の業績により0〜4か月分程度の幅があり、正社員の年収を大きく左右します。
介護報酬改定と処遇改善制度が訪問リハビリの給料に与える影響
令和6年度介護報酬改定で新設された加算
訪問リハビリに関連する主な新設加算は以下の通りです(厚生労働省・令和6年度介護報酬改定資料)。
- 認知症短期集中リハビリテーション実施加算:240単位/日(週2日上限)
- 退院時共同指導加算:600単位(退院につき1回限り)
- 口腔連携強化加算:50単位/回
これらの加算が事業所収益を増やし、間接的に給与に反映される可能性があります。ただし、算定には要件を満たす必要があり、すべての事業所で恩恵を受けられるわけではありません。
処遇改善加算のPT・OT・STへの配分実態
処遇改善加算の取得率は95.1%(令和6年度、厚生労働省資料)と高水準ですが、PT・OT・ST又は機能訓練指導員に配分している事業所は34.3%にとどまります。賃金改善の方法はベースアップ59.8%、定期昇給43.6%、賞与引き上げ33.1%(複数回答)です。
なお、訪問リハビリテーションは処遇改善加算の対象外サービスですが、令和7年度補正予算「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」(総額1,920億円)では対象に含まれ、交付率10.8%が適用されます(厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1454)。月額1万円相当の支援が想定されています。
報酬単位数から逆算する「訪問リハビリの給与原資」の構造

訪問リハビリの事業所収入は、基本的に次の構造で決まります。
事業所収入 = 1件あたり報酬単位数 × 地域単価 × 月間訪問件数
ここから人件費・事務費・移動コストを差し引いた残りが給与原資です。一般的な傾向として、売上の50〜60%程度が人件費に充てられるとされています。
雇用形態による実質手取りの違いにも注意が必要です。正社員は健康保険・厚生年金・雇用保険が事業所と折半されるため手取り率は下がりますが、将来の年金額や傷病時の保障があります。非常勤・業務委託は額面上の単価が高く見えても社会保険料を全額自己負担する場合があり、一般的な傾向として、額面年収が同じでも雇用形態により手取りに年間数十万円の差が出る場合があります。
求人を選ぶ際は「1件あたりのインセンティブ額」だけでなく、事業所が加算をどれだけ算定しているか、経営が安定しているかを確認する視点が重要です。
訪問リハビリで給料を上げるキャリアパスと条件
資格手当(認定理学療法士・専門理学療法士)と役職手当
認定理学療法士・専門理学療法士の取得で月額数千円〜1万円程度の資格手当が付く事業所がある一方、手当の設定がない事業所も多くあります。資格取得が直接的に大幅な年収アップにつながるとは限りませんが、管理職登用や転職時の交渉材料として有効な場合があります。
管理者・所長への昇進では、役職手当として月2〜5万円程度が加算される傾向があります。訪問リハビリは比較的少人数の組織のため、経験年数5〜10年程度でポジションが開く場合もあります。ただし、管理業務の増加で訪問件数が減り、インセンティブ収入が下がるトレードオフが生じる点は正直に把握しておく必要があります。
「給料が上がりにくい」事業所を見分ける3つのポイント
日本理学療法士協会の調査(2024年12月公表、n=141)では、介護施設の39.6%が2年間でベースアップなしと回答しています。昇給制度が形骸化している事業所は一定数存在します。
転職・入職前に確認すべき事業所の特徴:
- 加算の取得に消極的(処遇改善加算やリハ関連加算の算定状況を確認)
- インセンティブ制度がない(訪問件数が増えても収入が変わらない)
- 人事評価制度が不透明(昇給の基準・頻度が明示されていない)
面接時には「昇給の実績と頻度」「インセンティブの算定基準」「加算の取得状況」を具体的に質問することが、訪問リハビリの給料水準を見極める有効な手段となり得ます。
訪問リハビリの給料は今後どうなる?2つのシナリオ
上がりやすい条件
75歳以上人口は2,066万4千人(2024年8月確定値、総務省統計局)で前年比+3.48%と増加中です。令和7年度補正予算(1,920億円)では訪問リハビリも対象となり、月額1万円相当の支援が想定されています(厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1454)。日本理学療法士協会は次期改定(2027年度予定)に向け月額2万円以上の賃上げを要望しています。
ただし、これらは業界全体の追い風です。個別の事業所で必ず反映されるとは限りません。
注意すべき条件
- 介護報酬改定はマイナス改定になる可能性もある
- PT・OT・STへの処遇改善加算配分は34.3%にとどまる事業所が存在する
- 消費者物価指数111.5(2020年基準・2025年4月)の環境では、名目昇給があっても実質賃金が上がっていない場合がある
昇給を実現しやすい人・しにくい人
昇給しやすい傾向がある人
- インセンティブ制度がある事業所を選び、件数で成果を出せる
- 認定理学療法士等の資格取得・管理職を視野に入れている
- 面接時に加算取得状況・昇給実績を具体的に確認する習慣がある
昇給が難しくなりやすい傾向がある人
- 基本給の額面だけで選び、固定残業代の内訳を確認しない
- 「経験年数で自然に上がる」と漠然と期待している
- 小規模事業所の加算未取得リスクを考慮しない
よくある質問
Q1. 訪問リハビリの給料は病院より高いですか?
一概には言えません。訪問リハビリはインセンティブ次第で年収400万〜600万円の幅があり、件数を稼げれば病院を上回る可能性があります。一方、病院は昇給テーブルが明確な場合が多く、最低保証は安定している傾向があります。
Q2. 求人で確認すべき給与関連の項目は?
①基本給と固定残業代の内訳 ②インセンティブの有無と単価 ③賞与の実績(業績連動型か固定か) ④昇給の頻度と基準 ⑤住宅手当・通勤手当・車両借り上げ手当の有無 ⑥入社祝い金(支度金)がある場合の返還規定 ⑦社会保険完備・研修費補助の有無
Q3. 非常勤・パートでも訪問リハビリの給料は上がりますか?
非常勤は時給制・件数制が多く、定期昇給の仕組みがない事業所が大半です。時給の年次見直しが行われるケースもありますが、社会保険や賞与がない分、手取りで正社員と大差ない場合もあります。
まとめ:訪問リハビリの給料を上げる3つのアクション

- 事業所選びで「給与原資」を見極める:加算取得状況・インセンティブ・昇給実績を面接で質問する
- キャリアの方向性を早めに決める:件数型か管理職型かで収入の伸ばし方が異なる
- 制度改定の動向を定期確認する:介護報酬改定(2027年度予定)と処遇改善加算の動向が訪問リハビリの給料に直結する
訪問リハビリの給料が上がるかは、業界の追い風だけでなく、どの事業所を選びどのキャリアを歩むかで変わってきます。条件を確認し、納得した上で選択することが後悔しない判断につながるでしょう。
参考文献・引用データ
本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。
- 【日本理学療法士協会】|理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の処遇改善に関する緊急重点要望|会議資料
- 【日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー協会】|理学療法士におすすめの転職エージェント厳選比較(2026年版)|業界レポート
- 【総務省統計局】|人口推計(2025年1月1日現在概算値・2024年8月1日現在確定値)|公的統計
- 【総務省統計局】|人口推計 2025年(令和7年)1月報|公的統計
- 【厚生労働省】|介護人材確保に向けた処遇改善等の課題|会議資料
- 【PT-OT-ST.NET】|訪問リハビリテーション(令和6年介護報酬改定対応)|制度解説
- 【厚生労働省】|令和7年度第9回 入院・外来医療等の調査・評価分科会 資料|会議資料
- 【厚生労働省】|介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援について|会議資料
- 【厚生労働省】|令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)|制度解説
- 【カイポケ】|2024年度(令和6年度)訪問リハビリテーション 介護報酬改定情報まとめ|業界レポート
- 【全国老人保健施設協会】|令和6年度 介護報酬改定 通所リハビリ・訪問リハ等の主な加算の改定ポイント|会議資料
- 【厚生労働省】|介護保険最新情報 Vol.1454 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業|制度解説
- 【厚生労働省】|介護保険最新情報 Vol.1448 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善に対する支援|制度解説
- 【厚生労働省】|令和7年度 外来データ提出加算等に係る説明資料|制度解説

