目次

病院から訪問看護への転職を検討しながら、「訪問看護 年収500万という数字は一部の人だけの話では?」と感じている方は少なくないはずです。収入が上がるのか下がるのか、判断材料がなければ踏み出しにくいですよね。
データを見ると見えてくる事実
日本看護協会『2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査』(2025年6月24日発表)によると、訪問看護ステーションのスタッフ(非管理職・正規雇用フルタイム)の平均年収は約508万円(n=322)でした。
役職なしの段階で、すでに平均が500万円台に届いています。
ただし、これはあくまで平均です。年齢・事業所の規模・オンコール対応の有無・給与体系によって数字は大きく変わります。条件次第では500万円に届かないケースも当然あります。
この記事では、以下の3点を整理します。
- 年収500万円に届く人の具体的な条件と職場環境
- 給与体系・手当の種類が年収に与える実際の影響
- 転職前に確認すべきチェックポイント
自分が500万円に届くかどうか、読み終えたら判断できる状態を目指しています。具体的に見ていきましょう。
市場の事実 — 統計から見る訪問看護師の年収水準

日本看護協会『2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査』(2025年6月発表・図表3)の役職別平均年収です(正規雇用フルタイム)。
| 役職 | 訪問看護ST(円) | 病院(円) |
|---|---|---|
| スタッフ(非管理職) | 5,087,248 | 5,299,796 |
| 中間管理職(主任相当) | 5,760,740 | 6,314,987 |
| 看護師長相当 | 5,814,926 | 6,763,829 |
| 管理者 | 5,911,504 | 8,180,594 |
| 経営者 | 7,364,685 | — |
スタッフ段階では病院との差は約21万円にとどまります。一方、管理職以上では差が拡大する傾向があります。訪問看護 年収500万円という水準は、スタッフ平均(約508万円)に照らすと「誰でも届く数字」ではなく「平均前後の目標値」として位置づけられます。
同調査(図表37・2025年1月支給)の月額は、病院(税込409,436円・基本給283,304円)に対し、訪問看護ステーション(税込383,262円・基本給280,046円)でした。基本給差は約3,000円ですが、賞与・一時金の差が年収の開きに反映されている可能性があります。
年齢別月額(同調査・図表39)は、訪問看護ST勤務者で35〜39歳(323,324円)から55〜59歳(373,823円)へ緩やかに上昇する傾向があります。厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』では、看護師(全産業)の賞与込み月給与は41.6万円とされています。
収入原資は、医療保険(診療報酬)と介護保険(介護報酬)の双方に設定された訪問看護費が土台となります。
制度の事実 — 給与を構成する加算と2026年の制度変更
訪問看護 年収500万円に関わる主な加算と手当の仕組みを整理します。
| 加算名 | 個人給与への反映例 |
|---|---|
| 24時間対応体制加算 | オンコール手当・待機手当 |
| 緊急訪問看護加算 | 実働手当(呼び出し時) |
| ターミナルケア加算 | 件数連動の特別手当 |
| 看護体制強化加算 | 体制要件充足に応じた手当 |
これらに移動交通費手当・訪問件数手当が加わり、年収を積み上げる構造です。
処遇改善の時系列(2025〜2026年)
訪問看護は長らく「介護職員等処遇改善加算」の算定対象外でした(厚生労働省資料)。直近の変化は以下のとおりです。
- 2025年12月〜2026年5月:令和7年度補正予算により訪問看護費に交付率13.2%の賃上げ・物価対策支援が実施。訪問看護費350万円規模の事業所では46.2万円の交付額が示されています(日本訪問看護財団資料)。
- 2026年6月以降:介護報酬に処遇改善加算が新設される予定とされています(同資料)。
大臣折衝事項では、ベースアップ等支援加算により令和6年度2.5%・令和7年度2.0%のベースアップ実施が示されています。制度的な賃上げ基盤が整いつつある段階といえます。
オンコール手当と給与体系の落とし穴 — 年収500万円のリアルな内訳

オンコール手当:法定内・法定外の区分
24時間対応体制では、待機と実働で手当の性質が異なります。
- 待機手当(法定外手当):自宅待機中の補償。労働時間該当性は実態次第で、1回あたり数百〜数千円程度の設定が見られる傾向があります。
- 実働手当:呼び出し後の訪問は労働時間となります。深夜(22時〜5時)は50%以上、時間外は25%以上の割増賃金(労働基準法)が適用されます。
待機手当のみで比較すると割安に見える場合がありますが、実働手当との合算で判断することが重要です。
給与体系と年収500万円の典型パターン
| 体系 | 特徴 | リスク |
|---|---|---|
| 固定給制 | 月収が安定 | 件数増加の恩恵が限定的な場合がある |
| インセンティブ制度 | 訪問件数手当で収入が上積みされる可能性がある | 件数減少で収入が変動する |
| 固定給+オンコール手当 | 多くの事業所で採用されている傾向がある | オンコール頻度が高いと負担が増す |
よくある事例として、基本給(月25〜28万円程度)にオンコール手当・訪問件数手当・賞与を加算したパターンで、訪問看護 年収500万円に近づく場合があります。件数依存型は体調不良や利用者減少時に収入が変動するリスクを伴う点も確認が必要です。
事業所規模が手当原資に与える影響
全国訪問看護事業協会『訪問看護の持続可能なサービス提供のあり方に関する調査報告書』(2024年7月末時点)によると、ステーション平均従業員数12.7人(中央値10人)・常勤換算看護師6.4人・月間延べ訪問回数(介護+医療合計)平均692.9回とされています。
介護報酬・診療報酬の収益が多い事業所ほど手当の原資が拡大する可能性があります。精神科訪問看護基本療養費の算定や自費訪問看護を展開する事業所は収益源が多様なため、手当原資が安定しやすい傾向があります。管理者手当(常勤換算による管理者要件が前提)も、年収積み上げの有力な要素の一つです。
年収500万円に届く2つのシナリオとリスクシナリオ
届きやすいシナリオ
日本看護協会2024年度調査では、訪問看護STのスタッフ平均が約508万円、看護師長相当で約581万円(正規雇用フルタイム・図表3)。規模のあるステーションでオンコール対応を担い、訪問件数手当・管理者手当が支給され、処遇改善加算の分配ルールが明確な職場では、500万円に届く可能性があります。求人倍率は4.54倍(2024年度ナースセンター登録データ)と売り手市場であり、転職交渉の余地は比較的あります。
届きにくいシナリオ
- 固定給制のみ・インセンティブ制度や訪問件数手当がない
- オンコール非対応で24時間対応体制加算の恩恵がない
- 小規模で算定加算の種類が限られる
求人票の基本給だけで判断すると、実態と乖離する可能性があります。
2026年以降の制度変化
2026年6月以降、訪問看護への処遇改善加算新設が予定されています(日本訪問看護財団資料)。令和7年度補正予算では訪問看護費に交付率13.2%の賃上げ支援が実施中(2025年12月〜2026年5月)。一方、診療報酬・介護報酬改定(令和6年度+0.88%)に収入が左右される構造は変わりません。ベースアップ等支援加算の事業所内分配ルールの透明性と昇給プロセス、移動交通費手当の有無は転職前に必ず確認してください。
訪問看護で年収500万円を狙う人の適性チェックリスト
向いている可能性がある人
- オンコール待機・緊急訪問に対応できる
- 訪問件数手当やインセンティブ制度を活かして収入を積み上げたい
- 単独訪問の判断責任を前向きに捉えられる
- 加算分配ルールや昇給プロセスを入職前に確認して動ける
慎重に検討すべき人
- 夜間・休日のオンコール待機が精神的に大きな負担になりやすい
- 固定給制の安定を最優先したい
- 収入の変動を許容しにくい
「誰でも訪問看護 年収500万円に届く」わけではありません。働き方の優先順位と給与体系を照合する視点が、ミスマッチを防ぐ手段の一つです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 訪問看護で年収500万は病院より上がりますか?
月額では病院(税込409,436円)が訪問看護ST(383,262円)をやや上回る傾向があります(2024年度調査・図表37)。一方、スタッフ年収の平均は約508万円と接近しています。オンコール手当・訪問件数手当が加わると上回る可能性があります。基本給だけでなく、賞与・各種手当を含めたトータルで比較することが重要です。
Q2. オンコール手当は待機だけでも支払われますか?
待機手当(自宅待機中の補償)と実働手当(出動時の割増賃金)は区分されることが多く、金額は事業所ごとに大きく異なります。深夜実働は法定割増賃金(50%以上)の対象です。面接で「待機1回の金額」「月平均待機回数」「実働手当の計算方式」を個別に確認してください。
Q3. 一人で動くため、人間関係のストレスは少ないですか?
単独訪問が多い一方、オンコール引き継ぎや緊急対応での連携はステーション内で不可欠です。一部の小規模ステーションでは少人数の関係性が濃密になりやすい場合があります。規模・体制によって実情は異なるため、見学・面接で職場環境を確認することを推奨します。
失敗しないための次のアクションプラン

求人票・面接で確認すべき5項目です。
| 確認項目 | 具体的に聞くこと |
|---|---|
| 基本給と手当の内訳 | 訪問件数手当・管理者手当・オンコール手当の金額 |
| オンコール条件 | 月平均待機回数・待機手当と実働手当の区分 |
| インセンティブ制度 | 件数連動の有無と計算方式 |
| 加算の分配ルール | 処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の透明性と昇給プロセス |
| 移動交通費手当 | 支給有無・上限額・精算方法 |
訪問看護 年収500万円は、条件が重なれば現実的な目標になり得ます。複数の事業所を比較し、手当の内訳まで納得した上で判断することが、長期的に働ける職場選びにつながる可能性があります。安易に一社で決断するより、条件の根拠を開示してくれる事業所を選ぶ視点を持ってください。
参考文献・引用データ
本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。
- 2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 結果(ニュースリリース)
- 2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査報告書
- 地域の医療・看護を守り抜くために 医療機関等への財政支援を(日本看護協会緊急要望)
- 日本看護協会 ニュースリリース一覧
- 2024年度 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析 結果
- 訪問看護の持続可能なサービス提供のあり方と役割に関する調査報告書(全国訪問看護事業協会)
- 介護人材確保に向けた処遇改善等の課題(厚生労働省)
- 令和6年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)
- 令和7年版 労働経済の分析(労働経済白書)(厚生労働省)
- 看護師等(看護職員)の確保を巡る状況(厚生労働省会議資料)
- 令和6・7年度介護報酬改定及び介護職員等処遇改善加算に関する最新情報(全国訪問看護事業協会)
- 第243回社会保障審議会介護給付費分科会:介護人材確保に向けた処遇改善等の課題(厚生労働省)
- 第243回社会保障審議会介護給付費分科会:介護職員の処遇改善について(厚生労働省)
- 令和7年度補正予算案:訪問看護・療養通所・看多機等への賃上げ・物価上昇対策の概要(日本訪問看護財団)

