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訪問看護への転職を考えるとき、こんな経験はありませんか。
求人票には「オンコール手当あり」の一言だけ。待機中の手当なのか、電話が鳴ったときの手当なのか、実際に出動した場合はどうなるのか——肝心な部分が見えないまま、判断を迫られる。
訪問看護のオンコール手当は、実は「3種類の場面」に分かれています。日本看護協会の2024年度調査(2024年12月実績)によると、待機のみで1回平均2,233円、電話対応で1回平均609円、緊急出動で1回平均1,791円(時間外手当別)という構造です。
ただし、これはあくまで平均値です。月の待機回数・出動頻度・ステーションの給与体系(時給制か定額制か)によって、合計額は大きく変わります。条件次第では「割に合わない」と感じるケースもあるのが実態です。
数字の意味と、自分の職場に当てはめた試算方法を具体的に見ていきましょう。
市場の事実|待機手当・出動手当の相場と月合計のリアル

3種類の手当と緊急訪問頻度(月平均)
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2024年12月実績、訪問看護ステーション勤務者)によると、訪問看護のオンコール手当は下表のとおりです。
| 区分 | 1回平均手当 | 月平均回数 | 月合計目安 |
|---|---|---|---|
| 待機(待機のみ) | 2,233円 | 7.7回(n=537) | 約17,200円 |
| 電話対応 | 609円 | 5.0回(n=445) | 約3,000円 |
| 緊急出動※ | 1,791円 | 2.3回(n=429) | 約4,100円 |
※緊急出動は時間外手当を除く金額。深夜帯の出動は深夜割増賃金が別途加算される可能性があります。
3区分を単純に積み上げると月約24,300円が目安の一つです。ただし、これは回答者全体の平均であり、待機回数・出動頻度によって実際の受取額は大きく変わります。
平日・休日・年末年始別単価と時給制・定額制の比較
単価の設定方式は事業所によって異なります。
- 定額制:待機1回ごとに固定額。平日より休日・年末年始を高く設定する事業所が多い傾向があります
- 時給制:待機時間×時給で計算。拘束時間が長いほど受取額が増える可能性があります
「月7.7回」という同じ回数でも、休日比率の高い月と平日中心の月では合計額が変わります。単価の水準だけでなく、設定方式と曜日別単価を事前に確認することが重要です。
月収全体に占める手当の位置づけ
同調査(報告書図表37・2025年1月支給分・n=637)によると、訪問看護ステーション勤務者(正規雇用フルタイム)の税込給与総額平均は383,262円、基本給平均は280,046円です。目安の約24,300円は給与総額の約6%に相当します。手当単体で判断せず、基本給水準と合わせて検討することが大切です。
制度の事実|手当の原資となる加算と労働基準法上の扱い
24時間対応体制加算・緊急時対応加算(2024年度診療報酬・介護報酬改定)
訪問看護のオンコール手当の原資は、診療報酬・介護報酬の加算です。
医療保険(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」)
- 24時間対応体制加算(イ):6,800円/月(看護業務の負担軽減の取り組みを行う場合)
- 24時間対応体制加算(ロ):6,520円/月(イ以外)/改定前は6,400円/月
介護保険(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
- 緊急時訪問看護加算 → 緊急時対応加算:574単位/月 → 774単位/月へ引き上げ
労働基準法上の扱い:指揮命令下・深夜割増賃金・勤務間インターバル
待機中が労働基準法上の「指揮命令下」にあるかどうかで、手当の性質が変わります。
- 実際の電話対応・緊急出動の時間は労働時間として扱われます。深夜(22時〜翌5時)の場合は深夜割増賃金(基本賃金の25%以上)の対象になりえます
- 飲酒禁止・移動距離制限など行動制限が強い場合、待機中も指揮命令下と認定される可能性があります
24時間対応体制加算(イ)の算定要件には「夜間対応した翌日の勤務間隔の確保」「夜間対応に係る勤務が2連続まで(やむを得ない場合は月間5%以内で許容)」が含まれます(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」)。この要件整備により、勤務間インターバルや代休・振替休日規定の充実が進みつつあります。
収益構造から見た手当の上限と待機の実態

加算算定率が手当還元の理論的限界を左右する
訪問看護のオンコール手当には、制度的な上限があります。加算収入を原資とする以上、加算を算定できていない事業所では手当の財源も限られます。
日本訪問看護財団「訪問看護サービス提供体制強化に向けた調査研究事業 報告書」(2025年8月時点・n=2,137)によると:
| 加算区分 | 算定実績あり割合 |
|---|---|
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | 63.3% |
| 緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 35.2% |
| ターミナルケア加算 | 77.2% |
加算を算定できている事業所ほど手当原資を確保しやすい傾向があると考えられます。ターミナルケアを積極的に受け入れる事業所は算定率が高く、手当水準も高い可能性があります。
1人体制・メイン・サブ2名体制と行動制限の現実
日本看護協会「2024年度 診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査」(表30・調査把握時点は2022年8月)によると、オンコールのみ採用の事業所(n=1,655)のうち:
- 1人体制:75.3%(1,246件)
- 2名以上のメイン・サブ体制:23.4%(387件)
4事業所に3事業所が1人体制です。1人で夜間の電話相談・傾聴対応から緊急訪問まで担う場合、心理的負担と拘束感は大きくなりがちです。
待機中は一般的に飲酒禁止・移動距離制限が課されます。ICT活用(電子カルテ・タブレット)で情報確認しながら電話対応のみで完結するケースも増えています。しかし、行動制限の範囲と手当額が見合っているかどうかは、入職前に確認すべき重要な判断軸の一つです。
訪問看護のオンコール手当を比較する際は、単価だけでなく「何人体制か」「行動制限の範囲」「加算算定状況」を合わせて判断することが、納得のいく選択につながるでしょう。
これからのオンコール手当はどうなる?2つのシナリオ
シナリオA(改善傾向):令和6年度改定で24時間対応体制加算(イ)が6,800円/月に引き上げられ、「夜間対応後の勤務間インターバル確保」や「夜間対応の連続2回まで」が算定要件に加わりました(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」)。これらを整備する事業所では、代休・振替休日規定も含めて待機環境が改善していく傾向があると考えられます。
シナリオB(低水準継続リスク):加算収入が手当の原資である以上、緊急訪問件数が少ない事業所では手当が低水準にとどまる可能性があります。負担軽減要件を満たせず加算(ロ)6,520円/月にとどまる事業所も存在します。加算算定状況の確認は、入職前の重要なチェックポイントの一つです。
オンコールが向いている人・向いていない人
向いている人
- 待機手当・出動手当の単価を事前確認し、納得できる人
- ターミナルケアやエンゼルケアに前向きに関われる人
- ICT活用(電子カルテ・タブレット)で電話相談・傾聴対応を完結できる環境を選べる人
- 緊急時に医師の指示書・プロトコルが整備された職場を選べる人
向いていない人
- 飲酒禁止・移動距離制限などの行動制限が生活と合わない人
- 1人体制での心理的負担が大きい人
- 深夜割増賃金・代休規定が曖昧な職場を避けたい人
緊急時の対応品質は、医師の指示書・プロトコルの整備状況に大きく左右されます。「緊急時の判断フローはありますか」と面接で直接確認することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 訪問看護のオンコール手当だけで月いくら増える?
日本看護協会2024年度調査(2024年12月実績)の平均値を積み上げると、月約24,300円が一つの目安です(待機2,233円×7.7回+電話609円×5.0回+出動1,791円×2.3回)。ただし、回数・単価・平日休日別設定は事業所ごとに異なり、実際の受取額には幅があります。入職前に単価表の提示を求めることをお勧めします。
Q2. 待機中の電話対応や出動は別途手当が出る?
待機・電話対応・緊急出動を別区分で設定している事業所が多い傾向があります。出動は労働時間として扱われ、深夜(22時〜翌5時)の場合は深夜割増賃金(基本賃金の25%以上)の対象になりえます。就業規則で各区分の定義と割増の扱いを確認してください。
Q3. 訪問看護のオンコール手当は税金・社会保険料の対象になる?
給与所得として支給される場合は原則課税対象となり、社会保険料の算定基礎に算入される可能性があります。実費弁償的な性質の部分の取り扱いは事業所によって異なる場合があります。給与明細の内訳区分と就業規則を必ず確認することをお勧めします。
次のステップ|面接前に確認すべき項目

条件を確認し、納得できたうえで次のステップに進みましょう。
求人票で確認
- 待機・電話対応・出動手当の単価(区分別記載の有無)
- 平日/休日/年末年始の別単価設定
- 時給制か定額制か
- 24時間対応体制加算の算定区分(イ6,800円かロ6,520円か)
面接で質問
- 1人体制かメイン・サブ2名体制か
- 勤務間インターバル・代休・振替休日の規定
- 緊急時の医師の指示書・プロトコルの整備状況
- 行動制限の範囲(飲酒禁止・移動距離の基準)
訪問看護のオンコール手当は、単価だけでなく体制・規定・加算算定状況が揃って初めて「月いくら」が見えてきます。給与明細の内訳まで含めた条件確認が、長く働ける職場選びにつながる可能性があります。
参考文献・引用データ
本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。
- 【日本看護協会】|2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 結果
- 【日本看護協会】|2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書
- 【日本看護協会】|2024年度 診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査
- 【日本看護協会】|訪問看護:事業紹介および実態調査報告
- 【日本看護協会】|2024年 病院看護実態調査 報告書(調査研究報告 No.101)
- 【日本訪問看護財団】|訪問看護の現状とこれから 2025年版
- 【厚生労働省】|訪問看護の概況・令和3年度介護報酬改定の内容・現状と課題および論点
- 【カイポケ】|訪問看護の2024年度診療報酬改定:24時間対応体制加算とベースアップ評価料
- 【厚生労働省】|令和6年度診療報酬改定の概要(在宅医療・訪問看護)
- 【厚生労働省】|令和6年度介護報酬改定における改定事項について(訪問看護・特定施設)
- 【日本訪問看護財団】|訪問看護サービス提供体制強化に向けた調査研究事業 報告書
- 【日本訪問看護財団】|訪問看護等データ集
- 【iBow】|2024年度訪問看護の報酬改定:24時間対応体制加算の算定要件とQ&A

