訪問リハビリは育児と両立できる?直行直帰の実態

看護師
住宅街で直行直帰の準備をする日本人女性理学療法士

病院やクリニックでは、急なお迎えや子どもの発熱で早退するたびに肩身が狭い。PT・OT・STなら誰もが感じたことのある場面です。

「訪問リハビリは直行直帰で融通が利く」と聞くけれど、実際どこまで対応してくれるのか。訪問リハビリ・育児・両立を本気で検討するとき、この曖昧さが判断を妨げます。

実はデータを見ると、制度の追い風は確実に強まっている

厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査によれば、短時間勤務制度を導入する事業所は70.0%(前年度61.0%)まで上昇。2025年4月・10月施行の育児・介護休業法改正では、事業主が2つ以上の柔軟な働き方措置を講じる義務が新設されました。制度面での追い風は確実です。

ただし、楽観はできません。訪問件数手当(インセンティブ)が給与の柱の事業所では、時短で収入が下がります。 直行直帰の可否も、ICT環境やオンコール体制次第で大きく異なるのが実態です。

この記事は、公的データと制度をもとに「自分に合うかどうか」を判断する材料を提供します。具体的に見ていきましょう。

時短・育休制度の普及——「平均の罠」を見抜く

就業規則を確認しながら時短制度について上司と話し合う日本人女性スタッフ

短時間勤務制度(時短)の導入率は70.0%(令和6年度雇用均等基本調査、厚生労働省)に達し、前年度の61.0%から9ポイント上昇しました。所定外労働の制限も64.0%(前年度55.4%)、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げも38.4%(前年度36.8%)に拡大しています。働き方改革関連法の影響もあり、制度の整備は着実に進んでいます。

しかし、数字だけでは判断を誤る可能性があります。制度の内訳に「平均の罠」があるためです。

短時間勤務制度の最長利用可能期間(制度あり事業所内訳、令和6年度雇用均等基本調査)

利用可能期間 割合
3歳未満まで 50.9%(前年度48.8%)
小学校就学の始期まで 17.0%(前年度14.1%)
小学校就学以降も対象 44.8%(前年度45.4%)

時短制度がある事業所の約半数(50.9%)は上限が「3歳未満」です。保育園入園後も時短が必要な場合、事業所ごとの期間設定を確認することが不可欠です。訪問リハビリ事業所は小規模なところも多く、法定最低限の運用にとどまる場合もあります。

男性育休も配偶者出産者の40.5%(令和6年度)と上昇傾向にあります。PT・OT・STのパートナーが育休を取りやすい環境が整いつつある点も、訪問リハビリと育児の両立を検討するうえで押さえておく背景情報です。

2025年法改正と給付金——産前産後休業から時短復帰まで

育児・介護休業法改正(厚生労働省)により、2025年に制度が強化されました。

2025年の主な改正ポイント

  • 育休取得状況の公表義務が1,000人超→300人超企業へ拡大(2025年4月1日施行)
  • 3歳〜小学校就学前の子を持つ労働者を対象に、柔軟な働き方措置を2つ以上提供する義務(2025年10月1日施行)——テレワーク等は月10日以上、養育両立支援休暇は年10日以上が要件
  • 子の看護等休暇(子1人:年5日、子2人以上:年10日)の継続雇用6か月未満除外規定が廃止

産前産後休業(産前6週・産後8週)から育休、時短復帰までの流れを経済面でもサポートする仕組みが整備されています。育児休業給付金は開始180日まで67%、以降50%(長野労働局、令和7年4月施行関連資料)。社会保険料免除との合算で実質手取りが約8割相当になるケースがあります。2歳未満の子を対象とした育児時短就業給付(給付率10%)も新設され、時短中の収入減を一定程度カバーする仕組みが整いつつあります。

事業所側には両立支援等助成金(2025年度、厚生労働省)が用意されています。柔軟な働き方選択制度等支援コースで20〜25万円、育休中等業務代替支援コース(短時間勤務)では最大128万円が支給される可能性があります。事業所が時短職員を受け入れる経済的動機が制度上担保されている点は、PT・OT・STが交渉材料として活用できる情報です。

訪問リハビリ×育児両立の現場——育児動作指導と周産期・産後リハビリテーション

在宅でタブレットを活用しながら高齢患者にリハビリ指導をする日本人女性理学療法士

訪問リハビリと育児の両立では、PT・OT・STの専門性そのものが強みになる場面があります。

一般的な傾向として、育児経験を持つPTやOTが、抱っこ・移動・授乳といった育児動作のバイオメカニクス(身体力学的分析)に基づく腰痛予防指導を行う場合があります。骨盤底筋群エクササイズを含むウィメンズヘルス領域・周産期・産後リハビリテーションの知識が、訪問先での実践的な指導に直結するケースもあります。認定理学療法士(ウィメンズヘルス・運動器等)の専門資格と育児経験がシナジーを生む傾向があるとされています。STにおいても、育児中に得た観察力や生活動作への理解が、在宅での摂食・嚥下指導に活かされる場合があります。

直行直帰制とICT(電子カルテ・タブレット活用)の普及も、育児との調整を後押しする要因の一つです。訪問エリアのルート管理ツールを活用して移動効率を高め、お迎え時間に合わせたスケジュールを組みやすくしている事業所もあります。

ただし、以下の3条件は事業所間で差が大きいため、確認なしに入職することは避けた方が安全です。

訪問リハビリ選びで必ず確認する3条件

条件 リスクの内容
稼働件数手当(インセンティブ)中心の給与体系 時短・件数減少時に収入が大幅に下がる可能性あり
オンコール体制の有無と頻度 夜間・休日の対応が育児スケジュールと競合する場合あり
ケアマネジャーとの連携負担 担当ケアマネ数が多い事業所では電話・書類対応が時間外に及ぶ場合あり

訪問リハビリと育児の両立が現実的かどうかは、直行直帰の可否だけでなく、これら3条件を面接・職場見学時に具体的に確認することで、判断精度が高まる可能性があります。

今後の見通し——ポジティブとリスクの両面

ポジティブシナリオ

2025年4月施行の育児・介護休業法改正で、育休公表義務が1,000人超→300人超企業に拡大されました。両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)では事業所に20〜25万円が支給される仕組みがあり、時短・直行直帰の導入が進む傾向があります。2025年10月以降は3歳〜小学校就学前を対象に、事業主が2つ以上の柔軟な働き方措置を講じる義務も新設されます。

リスクシナリオ

  • 稼働件数手当が給与の中心の事業所では、時短により収入が想定以上に下がる可能性があります
  • 時短制度の上限が「3歳未満」の事業所は50.9%(令和6年度雇用均等基本調査)。保育園入園後も時短が必要な場合、早期に上限に達する場合があります
  • オンコール体制や訪問エリアの広さによっては、直行直帰が制度上認められていても急なお迎え対応が難しいケースがあります

訪問リハビリ×育児両立——向いている人・向いていない人

向いている可能性がある人

  • 直行直帰やICT活用で自律的に動きたいPT・OT・ST
  • 育児経験を産後リハや育児動作指導の専門性として活かしたい人
  • 現時点では収入より時間の融通を優先できる人

慎重な検討が必要な人

  • 稼働件数手当で収入を最大化したい人
  • オンコールや急な訪問変更への対応が物理的に難しい家庭環境の人
  • プリセプターシップなど教育サポート体制を重視する人

よくある質問——訪問リハビリと育児の両立

Q1. 時短にすると訪問リハビリの収入はどのくらい下がる?

給与体系によって異なります。固定給中心の事業所なら時短比例の減収にとどまる傾向があります。稼働件数手当が中心の場合は、件数減少がそのまま収入に影響する可能性があります。2歳未満の子を持つ場合、育児時短就業給付(給付率10%)が2025年4月から適用され、時短中の収入減を一定程度カバーできる場合があります。

Q2. 子どもが急に熱を出したとき、直行直帰やオンコール免除は使える?

子の看護等休暇(子1人:年5日、子2人以上:年10日)と所定外労働の制限は育児・介護休業法上の権利です。産前産後休業からの復帰後も継続して使える制度です。ただし、訪問リハビリではケアマネジャーへの連絡や利用者への影響があるため、代替対応の仕組みが整っているかを事前に確認することが重要です。

Q3. 時短だと職場で肩身が狭くならない?

令和6年度介護労働実態調査(介護労働安定センター)では「勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が採用に効果があった取組の2位(19.2%)でした。介護報酬改定による人員確保難が続くなか、両立支援を人材定着の戦略として位置づける事業所が増える傾向があります。

面接・見学で確認するアクションプラン

訪問リハビリ事業所の面接でメモを取りながら条件を確認する日本人女性セラピスト

求人票だけでは判断できません。面接・見学時に以下を直接確認してください。

確認項目 聞くべき内容
時短の最長利用期間 3歳未満か小学校就学前まで使えるか
稼働件数手当の給与比率 時短・件数減時の実収入を試算する
直行直帰とオンコールの実運用 急な変更時の代替体制の有無
ICT導入状況 電子カルテ・タブレット活用の実態

訪問リハビリと育児の両立が成立するかは、制度の存在より運用の実態で決まります。上記4項目を確認し、自分と家庭の優先順位に納得できたら進む——それが長く働き続けるための有力な選択肢の一つです。

参考文献・引用データ

本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。

この記事の監修者
株式会社ゴルディロックス
代表取締役 / 理学療法士龍嶋 裕二(Yuji Ryushima)

理学療法士として大学病院にて超急性期から緩和ケアまで多岐にわたる臨床を経験。2013年に独立し、株式会社ゴルディロックスを設立。 現在、リハビリ特化型デイサービスや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等複数の事業を経営。またクリニックの運営やプロアスリートから子供の身体発育までをサポートするパーソナルトレーナーとしても活動中。医学的知見に基づいた地域密着型のヘルスケア環境づくりを牽引している。

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