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訪問看護療養費の請求業務は、令和6年12月2日のオンライン資格確認義務化を境に大きく変わりました。社会保険診療報酬支払基金への請求は原則翌月10日までですが、返戻・再請求を繰り返す事業所は少なくありません。
支払基金ではコンピュータチェックと目視審査を組み合わせた審査体制を取っており、令和6年12月診療分は確定件数が前年同月比6.4%増加しています。件数が増えるほど、レセプト点検の精度が請求の可否を左右する場面も増えます。
さらに介護保険の訪問看護受給者数は令和2年度の61万人から、令和7年度には71万人へ拡大する推計もあります。国民健康保険団体連合会への請求も含め、実務の負担は今後も増す見込みです。
本記事では、審査の階層化基準や返戻を防ぐ入力精度向上策、災害時の特例請求手順まで、公的資料に基づき整理しました。具体的に見ていきましょう。

支払基金の審査体制、3つの階層で何が起きているのか

社会保険診療報酬支払基金の審査は、すべてのレセプトを一律に人手でチェックしているわけではありません。コンピュータチェックで完結するもの、目視審査が必要なもの、明らかな誤りとして機械的に判断されるものの3階層に分かれています。この階層化を理解することが、返戻を減らす第一歩です。
支払基金の2025年5月号資料によると、コンピュータチェック対象事例は合計272,255件にのぼります。内訳は以下の通りです。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 前回と同一内容 | 131,483件 |
| 新規追加 | 129,661件 |
| 変更 | 1,047件 |
| 廃止 | 10,064件 |
これだけの数のチェック条件が常に更新され続けている以上、「昨年通りの書き方」が今年も通用するとは限りません。
コンピュータチェックで完結するレセプトの基準
コンピュータチェックは、算定回数の上限超過や併算定不可の組み合わせなど、機械的に判定可能なルール違反を検出する仕組みです。訪問看護基本療養費と訪問看護管理療養費の組み合わせ、同一建物居住者の減算適用漏れなどは、この段階で弾かれる傾向があります。入力時点でこれらのルールに沿っているかを確認するだけで、返戻の一定割合は防げる可能性があります。
目視審査に回るレセプトの特徴
一方、訪問看護指示書の有効期間と訪問日の整合性、公費負担医療との併用条件など、文脈判断を要する項目は目視審査に回ります。健保組合等16団体の再審査データ(2025年5月号)では、「原審どおり」の割合が8.9〜9.6%で推移しており、大半の再審査請求は審査結果が見直されていません。つまり、最初の請求段階での記載精度が結果を大きく左右する傾向があります。
訪問看護基本療養費・管理療養費の算定額を正しく把握する

請求誤りの多くは、基本的な算定額の認識違いから生じます。近畿厚生局の集団指導資料(令和6年度)に基づく主な単価は以下の通りです。
| 職種・区分 | 週3日目まで | 週4日目以降 |
|---|---|---|
| 保健師・助産師・看護師 | 5,550円 | 6,550円 |
| 准看護師 | 5,050円 | 6,050円 |
| 専門の研修を受けた看護師 | 12,850円 | ― |
| PT・OT・ST | 5,550円 | ― |
精神科訪問看護基本療養費は時間区分(30分以上/未満)でさらに細分化されており、こちらも職種別に単価が異なります。機能強化型訪問看護管理療養費における「専門の研修を受けた看護師」配置要件には令和8年5月31日までの経過措置が設けられています。該当する事業所は期限管理が必要です。
返戻・再請求を防ぐデータ入力精度向上策
返戻の主因は、訪問看護指示書の有効期限切れ、公費負担医療の併用条件不備、同一建物居住者区分の入力漏れに集中する傾向があります。実務上の対策としては次の点が挙げられます。
- 指示書の有効期間を毎月の請求前に必ず突合する
- 公費負担医療併用時は自治体ごとのルール差異を事前確認する
- 医療保険請求明細書のレセプト電算処理システムへの入力時、算定コードの重複・欠落を目視で二重チェックする
これらは審査支払事務手数料の増減には直接関係しませんが、返戻対応にかかる事務負担の軽減につながる可能性があります。
電子レセプト・オンライン請求システムへの移行実務
指定訪問看護事業者のオンライン請求は令和6年6月(7月請求分)から開始されています。オンライン請求システムを利用する事業所の支払期日は翌月20日、猶予届出を提出している事業所は翌月25日です(千葉県国保連合会手引き)。請求確定期限は毎月10日で統一されています。
オンライン資格確認の義務化は令和6年12月2日に施行されましたが、システム整備中の事業所には猶予措置があり、契約締結期限は令和6年10月31日、整備完了見込み期限は令和7年6月30日とされています。該当する事業所は、この経過措置の届出状況を再確認しておく必要があります。
災害時の特例措置と10割請求の実務
自然災害等で被災した利用者に対しては、特例措置により訪問看護指示書や計画書が未提出でも一定要件下で算定が認められる場合があります。この場合、支払基金への請求は原則10割請求となり、通常とは異なる請求コードの記載が必要です。国保連合会・支払基金いずれに請求する場合も、平時のルールと異なる点が多いため、該当地域の通知内容を都度確認することが実務上重要です。
2026年以降、請求実務はどう変わるのか
介護保険の訪問看護受給者数は、令和7年度に71万人、令和22年度には84万人へ拡大する推計です。利用者数が増えるほど、支払基金・国民健康保険団体連合会へのレセプト提出件数も増加する傾向があります。
オンライン請求システムへの移行はすでに始まっており、審査事務集約化(令和4年10月実施済み)も進行中です。今後は自治体ごとに異なる地方単独医療費助成事業の運用ルールについても、統一化が進む可能性があります。事業所によっては、請求体制を電子化・省力化しないと、事務負担だけが増える局面も想定されます。
自事業所の請求体制、見極めチェックリスト

訪問看護 支払基金 請求の実務体制が整っているかどうかは、次の項目で確認できます。
- オンライン請求・オンライン資格確認への移行が完了しているか
- 訪問看護指示書の有効期限を毎月自動突合できる仕組みがあるか
- 返戻レセプトの再請求フローが明文化されているか
- 公費負担医療併用時の自治体別ルールを一覧化しているか
- 審査支払事務手数料や返戻件数を月次で把握しているか
これらが曖昧な事業所では、返戻・再請求の事務負担が慢性化している可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 支払基金への請求で返戻が多い場合、まず何を見直すべきですか?
訪問看護指示書の有効期間と、公費負担医療の併用条件です。健保組合等の再審査データでは、原審が覆るケースは1割未満にとどまります。最初の請求段階での入力精度が、結果を左右する傾向があります。
Q2. オンライン資格確認の猶予措置は、まだ利用できますか?
契約締結期限は令和6年10月31日、システム整備完了見込み期限は令和7年6月30日とされています。該当する場合は、届出状況を保険者・厚生局へ確認する必要があります。
Q3. 災害時の特例で指示書が未提出でも請求できますか?
一定要件下で算定が認められる場合がありますが、支払基金への請求は原則10割請求となり、通常と異なる請求コードの記載が必要です。地域ごとの通知内容を都度確認してください。
まとめ:確認すべき数字と次の一手
訪問看護 支払基金 請求の実務は、制度改正のたびに細部が変わります。最後に、事業所内で確認すべき数字を整理します。
| 確認項目 | 数字 |
|---|---|
| 請求確定期限 | 毎月10日 |
| オンライン請求の支払期日 | 翌月20日 |
| 猶予届出提出時の支払期日 | 翌月25日 |
| 機能強化型の経過措置期限 | 令和8年5月31日 |
これらの期日と要件を月次業務チェックに組み込むことが、返戻を減らす現実的な一歩です。制度は今後も変わる可能性があるため、支払基金・国保連合会の最新通知を定期的に確認する体制づくりが求められます。
参考文献・引用データ
本記事は社会保険診療報酬支払基金の公表資料、近畿厚生局集団指導資料(令和6年度)、千葉県国民健康保険団体連合会の請求手引き、介護保険事業状況報告等の公的資料に基づき作成しています。

