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透析患者の高齢化と訪問看護の求人市場|透析経験者の立ち位置

透析患者は減少局面でも高齢化が進んでいる
日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」では、透析患者は337,414人(人口100万人当たり2,725.4人)です。平均年齢は70.27歳、透析導入患者は71.69歳です。日本透析医会資料によると、ピークは2021年末の349,700人で、現在は減少局面です。
2024年の年齢階級別患者数(同調査)は次のとおりです。
- 75〜79歳:56,820人
- 80〜89歳:70,867人
- 90歳以上:10,868人
80〜89歳は、年齢階級の中で人数が多い層です。
原疾患は糖尿病性腎症が39.2%です(2024年末)。合併症管理を含む多疾患管理が求められる傾向があると考えられます。死因は感染症24.2%、心不全19.0%です(2024年)。この数値は、後述する観察項目の根拠になります。
訪問看護の求人倍率4.54倍の読み方
厚生労働省「看護職員の確保策について(資料4)」(2024年度ナースセンター登録データ)の領域別求人倍率です。
| 領域 | 求人倍率 |
|---|---|
| 訪問看護ステーション | 4.54倍 |
| 病院(20〜199床) | 3.00倍 |
| 診療所(無床) | 1.03倍 |
| 診療所(有床) | 0.52倍 |
注意点は2つです。
- 透析経験者限定の倍率でも、ハローワーク全体の倍率でもありません。
- 透析クリニックを含む診療所から訪問看護へ移る場合、求人の選択肢は広がる傾向があります。ただし、倍率の高さは、人手不足で教育体制が手薄な事業所を含み得ることも意味します。
給与は「透析経験だから上がる」とは言えない
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査報告書」(2025年1月支給分、正規雇用フルタイム)です。
| 区分 | 回答者数 | 平均基本給月額 | 平均税込給与総額 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護ステーション | 637人 | 280,046円 | 383,262円 |
| 診療所 | 71人 | 291,453円 | 393,454円 |
| 病院 | 2,502人 | 283,304円 | 409,436円 |
透析経験の有無で分けた集計ではありません。診療所は回答者が71人と少なく、透析クリニックに限った値でもありません。
賃金満足度(同調査)では、訪問看護ステーションで「満足」7.1%、「やや満足」16.5%、「やや不満」28.5%、「不満」22.7%でした。診療所は「やや不満」25.5%、「不満」30.2%です。転職だけで給与の不満が解消するとは限りません。
訪問看護指示書と保険制度|訪問看護で透析患者に関われる範囲
健康保険法と介護保険法、どちらの訪問看護になるか
訪問看護は、医療保険(健康保険法等)か介護保険法のいずれかで提供されます。要介護認定を受けた高齢の透析患者では、ケアマネジャー連携が日常業務になる傾向があります。
- 介護保険の利用者:約74.4万人(2023年6月審査分、介護給付費等実態統計)
- 医療保険の利用者:約48.4万人(2023年6月審査分をもとにした保険局医療課の推計)
両者は重複処理が明記されていないため、合算して全国実人数にはできません。透析患者の人数でもありません。
医療保険は原則週3日以内|特別訪問看護指示書は14日間
北海道厚生局「指定訪問看護の理解のために」では、次のとおりです。
- 医療保険の訪問看護は原則週3日以内(週3回ではありません)
- 別表第7・第8等の対象者は週4日以上の訪問が可能
- 特別訪問看護指示書の有効期間は14日間
同資料の別表第8には、在宅自己腹膜灌流・在宅血液透析の記載があります。別表第7とは別の区分です。適用は主治医の指示と算定要件によります。
訪問看護は、訪問看護指示書の範囲内で行うのが原則です。診療報酬は原則2年に1回、介護報酬は3年に1回改定されます。最新の算定要件は厚生労働省の告示・通知で確認してください。
血液透析(HD)・腹膜透析(PD/APD)・在宅血液透析(HHD)の関わり方
通院HDの患者では、透析日以外の体調・水分・服薬の管理が中心になる傾向があります。PD・APD(自動腹膜透析)の療養者では、手技の継続支援が中心です。
海外の研究では、週3回の血液透析を標準とし、一部患者では週4回以上や週2回が検討されると説明されています(Ashbyら, BMC Nephrology, 2019)。透析スケジュールは患者ごとに異なり得るため、訪問日を透析日と調整する視点が必要です。英国のガイドラインであり、日本の算定基準ではありません。
海外のナーシングホーム入居透析患者を対象にした観察研究では、生存期間中央値が毎日の在宅血液透析群で36か月、従来型血液透析群で21か月と報告されています(Yangら, Nephrology News & Issues, 2017)。透析方式の違いを見た研究で、訪問看護の効果や因果関係を示すものではありません。HHDが海外で研究されている、という紹介にとどめます。
透析認定看護師(腎不全看護)と研修体制
日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(分母3,417病院)では、正規雇用のB課程認定看護師が1人以上所属する病院は、腎不全看護で34病院(1.0%)、在宅ケアで13病院(0.4%)です。病院数であり、認定看護師の人数ではありません。
一般に「透析認定看護師」と呼ばれる資格は、現在「腎不全看護」の区分で扱われています。要件は日本看護協会で確認してください。訪問看護の同行訪問期間など、研修体制の公的統計は明示されていません。応募先ごとに確認しましょう。
在宅でのドライウェイト(DW)評価と主治医への報告|透析経験が活きる場面と限界

透析室と在宅では「見える情報」が違う
透析室では、毎回の体重・血液検査・透析中の血圧推移が手元にあります。在宅ではこれらが限られ、生活の場で徴候を拾う必要があります。検査値がない状況での判断は、よくある戸惑いの一つです。
在宅でのDW評価の観察指標
訪問看護で透析患者を支える場合の観察項目です。
| 観察項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 体重 | 同条件での測定と推移 |
| 血圧 | 変動 |
| 経皮的酸素飽和度 | 低下の有無 |
| 下腿浮腫 | 深さと戻り |
| 心不全徴候 | 呼吸困難・起坐呼吸・夜間の咳 |
| 除水量・尿量管理 | 残腎尿量、飲水量の聞き取り |
| 高カリウム血症 | 高カリウム食品の摂取、脱力感、しびれ、脈の乱れ |
| シャント管理 | スリル・シャント音、狭窄・閉塞を疑う変化、腕の圧迫や採血・血圧測定の回避 |
心不全19.0%・感染症24.2%(日本透析医学会、2024年)という死因構成は、観察を重視する根拠になります。
主治医・透析施設への報告プロトコル
報告先は事前に決めます。透析施設、かかりつけ医、訪問看護指示書の発行医などです。報告の閾値は、訪問看護指示書や主治医が定めた報告基準に従います。
状況・背景・評価・提案の順で伝えるSBARが有効とされる方法です。救急要請の基準は、事業所の管理者・主治医と事前に取り決めます。
APDのトラブル対応|介入範囲と限界
エラー表示は、メーカーのサポート窓口と主治医施設の手順に沿って対応します。看護師が独自判断で設定を変更してはいけません。停電時の対応は、患者・家族と事前に確認しておきます。
腎臓リハビリテーションとよくある失敗パターン
透析日の疲労で活動量が落ちやすい傾向があります。主治医の指示の範囲内で、ADL評価(移動・排泄・入浴)と日常生活での活動維持を意識します。効果を示す数値は、今回の資料では確認できていません。
よくある事例として、次の失敗が挙げられます。
- 検査値中心の判断の癖が残り、生活背景を見落とす
- 報告ラインが曖昧なまま1人で抱え込む
- 「透析患者が多い」と思って入職したが、利用者は透析以外が大半だった
訪問看護で透析経験を活かせるかは、利用者層・指示書の範囲・報告体制によって変わる可能性があります。
透析経験者のキャリアの将来予測|2つのシナリオ
可能性が高いシナリオ
日本透析医学会(2024年12月31日現在)によると、透析患者の平均年齢は70.27歳です。80〜89歳は70,867人います。
医療保険の訪問看護利用者数の推計は次のとおりです。
- 約48.4万人(2023年6月審査分をもとにした推計)
- 約57.2万人(2025年6月審査分の速報値をもとにした推計、北海道厚生局資料)
いずれも保険局医療課の推計で、時点が異なります。
以上から、高齢透析患者の在宅療養を支える場面は、今後も一定程度続くと考えられます。原疾患は糖尿病性腎症が39.2%です。透析と他疾患をあわせて管理できる看護師は、重宝される傾向があります。
リスクシナリオ
- 透析患者数は2024年末まで3年連続で減少しています(日本透析医学会)。
- 診療報酬は2年に1回、介護報酬は3年に1回改定されます(北海道厚生局資料)。事業所の経営や求人条件が変わる可能性があります。
- 訪問看護の利用者の多くは透析以外の疾患と考えられます。透析の専門性だけでは差別化しにくく、在宅看護全般を学び直す前提が必要です。
訪問看護で透析経験を活かせる人・活かしにくい人|適性チェックリスト
向いている人
- シャント管理や水分・体重管理を、生活指導まで含めて説明できる
- CAPD(連続携行式腹膜透析)の透析液バッグ交換やカテーテル出口部ケアを、理解度に合わせて段階的に指導できる
- 腹膜炎の徴候(排液の混濁、腹痛、発熱)を早期に拾い、報告できる
- 自己管理指導(セルフケア支援)を「指導」ではなく「伴走」と捉えられる
- ケアマネジャーや透析施設との調整を苦にしない
向いていない可能性がある人
- 医師がそばにいないと判断に強い不安があり、相談を後回しにしがち
- 認知症、がん、終末期など透析以外の疾患を学ぶ意欲が持てない
- オンコール対応が生活上どうしても難しい
- 業務手順が決まっていないと動けない
- 移動を伴う働き方に抵抗がある
当てはまっても不向きと決まるわけではありません。研修や相談体制が整った事業所を選べば、補える場合もあります。
訪問看護と透析経験に関するよくある質問(FAQ)
Q1.訪問看護 透析の経験を活かして転職すると、給与は上がりますか?
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査報告書」(2025年1月支給分、正規雇用フルタイム)の平均税込給与総額は次のとおりです。
| 区分 | 平均税込給与総額 |
|---|---|
| 訪問看護ステーション | 383,262円 |
| 診療所 | 393,454円 |
平均値では、一概に上がるとは言えません。透析経験による加算や手当は事業所ごとに異なり、公的統計にも明示がありません。求人票と面接で確認してください。
Q2.訪問看護のオンコールで、透析患者の急変に対応できるか不安です
オンコールの回数や出動頻度は、公的統計に明示がありません。同調査では、訪問看護ステーションの平均時間外手当額は31,772円です(支給対象の正規雇用フルタイム、2025年1月支給分)。一方、1万円未満の層も27.4%います。手当の水準には幅があります。
電話で判断に迷ったときの相談先(管理者・主治医)が明確な事業所を選ぶと、不安を減らせる可能性があります。
Q3.訪問看護 透析の現場は1人で訪問します。人間関係や相談のしにくさはありますか?
厚生労働省資料に掲載された日本看護協会2025年調査では、働き続けるために重要視する点は次のとおりです。
- 業務や役割、責任に見合った賃金額:53.6%
- 職場の人間関係が良い:48.5%
訪問中は1人でも、カンファレンスや記録共有の仕組みで孤立感は変わる傾向があります。見学時は、申し送りの方法、同行訪問期間、相談体制を確認しましょう。
転職を検討する前のアクションプラン

- 経験の棚卸し:HD・PD・シャント穿刺・患者指導・多職種連携の経験を、具体的な場面で書き出します。
- 求人票と面接で確認する:透析患者・PD利用者の受け入れ実績、同行訪問期間、オンコールの回数と手当、報告ライン、研修制度を聞きます。
- 同行見学で体感する:在宅での動き方や記録・申し送りの流れを見ます。
- 応募書類で言語化する:透析経験を、観察・報告・生活指導の力として書きます。
透析経験は在宅で活かせる土台になり得ますが、それだけで評価や給与が決まるわけではありません。条件を確認し、納得できたときに一歩を踏み出してください。
参考文献・引用データ
本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。
- 日本透析医学会|わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)
- 日本透析医学会|令和7年度事業報告
- 日本透析医会|透析患者数減少の背景と腎代替療法の展望
- 日本透析医会|透析医療の現状とこれから…日本と世界
- 日本透析医学会|わが国の慢性透析療法の現況(2023年12月31日現在)
- 日本看護協会|2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査報告書
- 厚生労働省|看護職員の確保策について・資料4
- 日本看護協会|2024年 病院看護実態調査 報告書
- 日本看護協会|ニュースリリース:2024年病院看護実態調査結果の概要
- 厚生労働省|job tag:看護師 職業詳細
- 厚生労働省|訪問看護の概況および令和3年度介護報酬改定の現状と課題
- 北海道厚生局|指定訪問看護の理解のために
- 厚生労働省|在宅(その1)・在宅医療及び医療・介護連携資料
- すえひろ訪問看護ステーション|2026年介護保険改定で訪問看護の自己負担はどう変わる?
- ケアチーム|2024年改定対応・訪問看護におけるターミナルケア加算
- 【論文】Mancinら(2024)|Dysphagia screening post-stroke: systematic review.
- 【論文】Ashbyら(2019)|Renal Association Clinical Practice Guideline on Haemodialysis.
- 【論文】Yangら(2017)|Nursing home care. Daily HHD vs conventional dialysis: A survival comparison.


