訪問看護のオンコールは月何回?平均回数と実態

看護師
夜間にオンコール待機中の日本人訪問看護師がスマートフォンを手に持つ様子

「夜中に毎日電話が来るのか」「月に何回呼び出されるのか」——その数字が見えないまま、転職を決断するのは怖いですよね。「オンコールがきつい」という噂は耳にするものの、具体的な回数がわからず、一歩を踏み出せない方は多いはずです。

実は、日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」全国訪問看護事業協会「令和7年度報告書」の公的データから、平均回数はかなり具体的に把握できます。

ただし、平均値だけで判断すると誤ります。事業所の規模・人員体制・地域によって、体感は大きく変わるからです。

平均値だけでは見えない「体感の差」

注意したいのは、「待機回数」と「実際の出動回数」はまったくの別物という点です。さらに、1か月のオンコール担当者が2人の事業所と10人の事業所では、1人あたりの負担が数倍変わります。

平均の裏に隠れた「体感の差」を、データで具体的に見ていきましょう。

市場の事実:訪問看護のオンコール回数を公的統計で見る

訪問看護のオンコール回数に関する統計データを確認する看護師

日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2024年12月の1か月間)が示す数値です。

区分 月平均回数 1回あたり手当
待機(待機のみ) 7.7回(n=537) 2,233円
電話対応 5.0回(n=445) 609円
緊急出動 2.3回(n=429) 1,791円※

※緊急出動手当は時間外手当を除く

2014年の同協会調査では待機回数の平均が9.4回/月でした。2024年の7.7回と比較すると、やや減少傾向にある可能性があります(調査設計が異なるため断定はできません)。

全国訪問看護事業協会「アクションプラン2025」によると、介護保険利用者のうち緊急時訪問看護加算の算定割合は59.5%(令和3年)。24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算は2024年度診療報酬改定でも継続しており、オンコール体制は業界標準です。

待機・電話対応・緊急出動の違いを整理する

訪問看護のオンコール回数には3段階あります。

  • 待機(7.7回):電話を携帯して待つ日数
  • 電話対応(5.0回):実際に電話が鳴り応答した回数
  • 緊急出動(2.3回):利用者宅へ実際に向かった回数

「家を出る回数」の平均は月2〜3回です。待機のたびに出動するわけではありません。

事業所規模・地域でどう変わるか

同協会「2024年度 訪問看護実態調査」によるオンコール採用割合です。

区分 採用割合
看護職員5人未満 89.8%
5〜10人未満 94.5%
20人以上 83.9%
東京23区 94.0%
町村 91.9%

1か月の担当者数は平均4.0人(n=1,633)で、4人以下の事業所が63.7%を占めます。少人数体制ほど1人あたりのオンコール回数が増える構造です。

制度の事実:オンコール体制を守るルールと2024年改定で変わった点

看護師等以外の職員による電話対応が一定要件で認められた

2024年度診療報酬改定に伴う厚生労働省の疑義解釈により、24時間対応体制加算において看護師等以外の職員が一次受付を担うことが認められました。要件は①訪問看護記録書への記録、②主治医への報告体制の整備、③看護師が速やかに判断できる連絡体制の確保です。

海外の研究では、外来腹膜透析患者753件の電話相談のうち77.5%が電話対応のみで解決し、看護師訪問が必要となったのは全体の約5%にとどまると報告されています(Albert et al., BMC Nursing, 2024)。「電話が鳴る=即出動」ではないことの参考になります。

転職前に確認すべき3書類と体制

チェック書類 確認ポイント
オンコールマニュアル 救急要請判断基準・手順が明示されているか
雇用契約書(オンコール条項) 待機手当・出動手当の金額・平日休日の差異が明記されているか
訪問看護記録書・主治医報告フロー 電話受付後の記録・報告が体系化されているか

1晩の対応体制が「1人」の事業所は75.3%、メイン・サブ2人体制は23.4%(全国訪問看護事業協会調査、n=1,655)。2人体制の事業所は心理的負担が軽い傾向があります。勤務間インターバル(オンコール明けの休息規定)の有無も選択基準の一つです。

現場の事実:1か月のオンコール業務をリアルにシミュレーションする

深夜に緊急出動した訪問看護師が高齢患者のバイタルサインを確認している様子

平均値から1か月の動きを再構成した一般的パターンです。

月間手当の試算(1回あたり手当×平均回数による試算値/日本看護協会 2024年度賃金実態調査)

区分 計算式 試算額
待機手当 2,233円×7.7回 17,194円
電話対応手当 609円×5.0回 3,045円
緊急出動手当 1,791円×2.3回 4,119円
合計 約24,358円

時間外手当は別途加算されます。

利用者全員から夜間に呼ばれるわけではありません。厚労省「令和4年介護サービス施設・事業所調査」では、看護内容に「緊急時の対応」が含まれる利用者は8.9%です。

一方、全国訪問看護事業協会「令和7年度報告書(2025年7月)」によると、緊急訪問した利用者数は平均4.5人・中央値3人、延べ訪問回数は平均8.3回・中央値5回。在宅看取り者数は平均9.1人・中央値5人(2024年4月〜2025年3月)です。平均が中央値を大きく上回ることから、ターミナル期利用者を多く抱える一部事業所に夜間訪問が集中する構造があります。

利用者背景別のトリアージ判断

電話が鳴った際、次の3指標で緊急度を判断します。

  • NRS(疼痛評価スケール):0〜10で痛みを数値化し重症度を把握
  • JCS(ジャパン・コーマ・スケール):意識レベルを段階評価(0が清明)
  • SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度):90%未満は緊急対応の目安

独居・認知症・終末期といった背景とこれらの数値を組み合わせ、電話指導・主治医報告・救急要請を判断します。ターミナルケア加算算定対象者では夜間コール頻度が上がる傾向があります。電子カルテやチャットツールで利用者情報を即時共有できる事業所ほど、夜間の判断精度が上がる可能性があります。

今後のシナリオ:訪問看護のオンコール回数はどう変わるか

可能性が高いシナリオ:訪問看護STの全国稼働数は18,743件(2025年4月、全国訪問看護事業協会)、年平均成長率8.8%で増加中です。緊急時訪問看護加算の算定率が59.5%(令和3年)と高水準を維持しており、オンコール需要は当面続く可能性があります。一方、2024年度改定で看護師以外の職員による電話受付が認められたため、看護師1人あたりの負担は分散される方向が期待されます。

リスクシナリオ:廃止理由の22.7%が「従業員確保困難」、休止理由の17.4%が「人員基準未達」(全国訪問看護事業協会、2025年3月報告書)。小規模事業所では1人あたりのオンコール回数が増加し続けるリスクがあります。

オンコール業務が向いている人・向いていない人

向いている人

  • 電話対応のみで完結する場面が多いことを許容できる
  • 月2〜3回程度の夜間出動なら生活設計できる
  • メイン・サブの2人体制がある事業所を選べる
  • 電子カルテ・ICTを活用した情報共有に抵抗がない
  • 在宅看取りに積極的に関わりたい

向いていない人

  • 睡眠中断で翌日のパフォーマンスが大きく落ちる
  • 独居・認知症・終末期比率の高い事業所は避けたい
  • 勤務間インターバルが確保されない職場には行きたくない
  • 1人体制(75.3%の事業所)への不安が大きい
  • オンコールマニュアルが未整備の環境では動けない

よくある質問(FAQ)

Q1. 訪問看護のオンコール回数は月何回が平均ですか?

日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2024年12月)によると、待機7.7回・電話対応5.0回・緊急出動2.3回です。担当者数が少ない事業所では1人あたりの回数が増える傾向があります。

Q2. オンコール手当だけで月いくらになりますか?

1回あたり手当×平均回数の試算では、待機手当(2,233円×7.7回=17,194円)+電話対応手当(609円×5.0回=3,045円)+緊急出動手当(1,791円×2.3回=4,119円)=約24,358円(あくまで試算値)。これに時間外手当(訪問看護STの平均31,772円、2025年1月支給分)が別途加算される可能性があります。待機手当の平日・休日別金額や出動手当の詳細は雇用契約書で確認してください。

Q3. オンコールがきつい事業所を見分ける方法は?

面接で以下の6点を確認することを推奨します。

  • 雇用契約書のオンコール条項(手当額・平日休日差の明記)
  • 1人体制かメイン・サブの2人体制か
  • 月のオンコール担当者数(平均4人)
  • オンコールマニュアルの整備状況
  • 勤務間インターバルの運用有無
  • 電子カルテ・チャットツールの活用状況

次のアクション:転職判断前に確認すべき3ステップ

訪問看護への転職面接で雇用契約書のオンコール条項を確認する看護師

ステップ1:候補事業所に「月の待機回数・実出動回数・担当者数・1晩の対応人数」を数値で質問する。

ステップ2:雇用契約書と就業規則のオンコール条項を、入社前に書面で確認する。

ステップ3:体験同行・見学で電子カルテの運用と主治医への報告体制を実際に確かめる。

訪問看護のオンコール回数は平均値だけでは語れません。自分の生活リズムと事業所の体制が噛み合うかを、数字と書面で確認したうえで判断してください。

参考文献・引用データ

本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。

この記事の監修者
株式会社ゴルディロックス
代表取締役 / 理学療法士龍嶋 裕二(Yuji Ryushima)

理学療法士として大学病院にて超急性期から緩和ケアまで多岐にわたる臨床を経験。2013年に独立し、株式会社ゴルディロックスを設立。 現在、リハビリ特化型デイサービスや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等複数の事業を経営。またクリニックの運営やプロアスリートから子供の身体発育までをサポートするパーソナルトレーナーとしても活動中。医学的知見に基づいた地域密着型のヘルスケア環境づくりを牽引している。

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