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「処遇改善で給料が上がる」と聞いても、自分の給与明細に実際に反映されるか分からない——そう感じている訪問看護師は多いはずです。
実はデータを見ると、構造が複雑です
訪問看護師の賃上げは2つのルートが並存しています。
- 医療保険ルート:訪問看護ベースアップ評価料(診療報酬)
- 介護保険ルート:介護職員等処遇改善加算
重要な前提として、訪問看護ステーションは長らく介護職員等処遇改善加算の対象外サービスでした。他の介護事業所と同じ土俵で語れない点に注意が必要です。
令和6年度診療報酬改定では、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)が月780円で新設されました(厚生労働省, 令和6年度診療報酬改定の概要, 2024年)。これは安心材料の一つです。
ただし、実際の賃上げ額は勤務先の保険区分構成や事業所の届出状況によって異なります。「全員が同額上がる」とは言い切れません。
この記事では、あなたの勤務先のケースで何円変わりうるかを判断できるよう、制度の仕組みから順に解説します。
訪問看護 処遇改善2024|給料は平均いくら上がったか

介護職員等処遇改善加算の取得事業所における平均給与額は、令和6年9月の334,500円から令和7年7月の341,340円へ+6,840円増加しています。基本給等(月給・常勤)は245,980円→252,110円で+6,130円の増加です(厚生労働省「介護人材確保に向けた処遇改善等の課題」令和7年実態調査)。
「平均+6,840円」には落とし穴があります。同調査の勤続1年(1年〜1年11か月)層では278,610円→303,740円と+25,130円の増加が見られます。勤続年数によって変動幅が大きい傾向があります。
加算の全体取得率は96.8%(本調査R7.7時点)に達しています。政府は令和6年度に+2.5%(2分5厘)、令和7年度に+2.0%のベースアップを政策目標として掲げており、2か年累計では+4.5%(4分5厘)相当の賃上げが目標とされています(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」)。
重要な注記:上記は介護保険サービス全体の数値であり、訪問看護ステーション単体の実績ではありません。自分の勤務先がどの制度に対応しているかは、次のセクションで確認できます。
訪問看護の賃上げ2系統|訪問看護ベースアップ評価料と介護保険新加算
訪問看護 処遇改善2024を把握するには、医療・介護の2系統を分けて理解する必要があります。
①医療保険ルート:訪問看護ベースアップ評価料
令和6年度診療報酬改定で新設されました(厚生労働省, 令和6年度診療報酬改定の概要, 2024年)。
| 区分 | 算定額(月1回) |
|---|---|
| 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ) | 780円 |
| 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ) | 10円〜500円(Ⅱ1〜Ⅱ18の18区分) |
評価料(Ⅱ)を算定するには施設基準を満たす必要があります。「評価料(Ⅰ)の算定見込額が、対象職員給与総額×医療保険利用者割合の1.2%(1分2厘)未満であること」が要件です。医療保険利用者の割合が低いステーションほど(Ⅱ)を算定できる可能性があります。
算定には賃金改善計画書の届出と、年度終了後の実績報告書の提出が必要です(関東信越厚生局)。
②介護保険ルート:補助金から新加算へ
訪問看護は従来、介護職員等処遇改善加算の対象外サービスでした。2025年以降、2段階で制度が拡充されています。
第1段階(2025年12月〜)
「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」として補助金が交付されます。(介護予防)訪問看護の交付率は13.2%(うち賃金改善経費分13.2%)です(介護保険最新情報Vol.1454)。
第2段階(2026年6月〜見込み)
訪問看護が介護職員等処遇改善加算の対象サービスに追加される見込みです。加算率は1.8%とされています(カイポケ訪問看護マガジン)。算定にはキャリアパス要件(職員の資質向上・資格取得支援等)と職場環境等要件(業務改善・ICT活用等)の整備が必要になる見込みです。
なお、処遇改善加算の配分先として看護職員への配分割合は63.0%(複数回答、同実態調査)に上っています。ただし、配分方法は事業所の判断によります。
医療・介護両方を算定しているステーションでは、財源の二重計上が課題になる可能性があります。次のセクションで実務的な対応を確認してください。
医療・介護保険を併用するステーションの按分計算と二重計上防止
医療・介護保険の両方を算定するステーションでは、同一職員が両制度の対象となる場合に財源の区分管理が重要です。
財源の按分ロジック
訪問看護ベースアップ評価料の財源は訪問看護療養費(社会保険診療等収入)です。介護保険の新加算の財源は介護予防訪問看護費です。同一職員への賃金改善額をどちらの財源から充当したか明確に区分しないと、二重計上が発生する可能性があります。
賃金改善見込額を月次でモニタリングし、医療・介護それぞれの財源から充当する金額を台帳上で管理することが重要と考えられます。ベースアップ評価料(Ⅱ)の要件には社会保険診療等収入の割合が関わるため、医療保険の収益比率が変動した際の見直し規定も必要です。
人員要件と対象職員の範囲確認
訪問看護ステーションの人員基準は常勤換算2.5名(保健師または看護師)が必須です。事務作業専属職員はこの常勤換算の算定に含めることができません。加算の算定区分によっては常勤換算2.0名等の要件が設定される場合もあるため、届出前に確認が必要です。
賃上げが割増賃金・法定福利費へ与える影響
処遇改善分が固定手当として支給される場合、労働基準法第37条に基づく割増賃金の基礎(残業代の計算基礎)に算入される可能性があります。残業が多い職員がいるステーションでは法定福利費(事業主負担の社会保険料)も増加する傾向があります。収支計画に事前に織り込んでおくことを推奨します。
移行期の賃金規定整備
2025年12月の補助金から2026年6月の新加算への移行時、賃金規定上の手当名称を広義で定義しておくことで、再度の変更届出を省ける可能性があります。法的整合性については社会保険労務士等への相談を推奨します。
自分の勤務先がどのルートに該当するかは、管理者に「訪問看護ベースアップ評価料の届出状況」と「2025年12月補助金の申請予定」を確認するのが有力な出発点の一つです。
将来予測|訪問看護 処遇改善2024以降のシナリオ

楽観シナリオ
政府は令和6年度+2.5%(2分5厘)、令和7年度+2.0%の累計+4.5%(4分5厘)のベースアップを政策目標に掲げています(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」)。2026年6月には訪問看護が介護職員等処遇改善加算の対象に追加される見込みで、加算率1.8%が想定されています。令和7年度補正予算では月額1万円相当の賃上げ支援も検討されており、複数の制度が重なることで賃上げ原資は拡大傾向にあります。
リスクシナリオ
加算はあくまで事業所への原資です。賃金改善の実施方法は定期昇給50.2%・ベースアップ42.4%・賞与引き上げ40.6%・手当新設20.3%(複数回答)と分散しており、基本給への反映を保証するものではありません。加算を届け出しない理由として「算定要件を達成できない」27.0%・「事務作業が煩雑」25.7%があります。一部の小規模ステーションでは取りこぼしリスクが残る可能性があります。
適性チェックリスト|処遇改善の恩恵を受けやすい職場・受けにくい職場
勤務先または転職候補先を評価する際の目安として活用してください。
✓ 恩恵を受けやすい特徴
- 医療・介護保険の両方を扱い、ベースアップ評価料・加算の届出が完了している
- 賃金規定・配分方針が就業規則に明文化されている
- 賃金改善計画書・実績報告書を適切に運用し、配分実績を開示している
- 中〜大規模ステーションで事務担当者を配置している
✗ 恩恵を受けにくい特徴
- ベースアップ評価料・加算を届け出していない小規模ステーション
- 配分方針が口頭のみで就業規則に明記されていない
- 医療保険利用者割合が低く、評価料(Ⅱ)も未算定
よくある質問(FAQ)|訪問看護 処遇改善2024
Q1. 処遇改善で手取りは実際いくら増える?
加算取得事業所の平均給与額は、令和6年9月比で+6,840円増加した実績があります(厚生労働省 令和7年実態調査)。医療保険ルートでは訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)が月780円で新設されています。ただし、保険区分の構成と事業所の配分方法によって変動するため、+6,840円はあくまで平均値です。勤務先の配分計画を確認することが重要です。
Q2. 賃上げ分はオンコール手当や残業代にも影響する?
処遇改善分が固定手当として支給される場合、労働基準法第37条に基づく割増賃金の基礎に算入される可能性があります。残業代の計算基礎が上がるため、オンコール時の割増賃金にも影響する場合があります。事業所の収支計画に法定福利費の増加が織り込まれているかも確認することを推奨します。
Q3. 自分だけ上がらないこともある?
あり得ます。配分は事業所の裁量であり、看護職員への配分を行っているのは回答事業所の63.0%(複数回答、同実態調査)です。入職・転職時に「賃金規定に配分方法が明記されているか」「実績報告書を開示しているか」の2点を事前に確認することを推奨します。
アクションプラン|今すぐできる3ステップ

- 給与明細と就業規則を確認する
勤務先の保険ルート・加算区分を把握する。訪問看護ベースアップ評価料の届出状況と2025年補助金の申請予定も管理者に確認する。 - 賃金改善計画書・実績報告書の開示を求める
配分の根拠書類を確認する。「開示できない」と言われる場合、配分の透明性に疑問が生じる可能性があります。 - 転職検討時は求人票を精査する
「処遇改善加算・ベースアップ評価料の届出状況」「配分方法の明文化の有無」を必ず確認する。
「加算があるから良い職場」とは言い切れません。配分の透明性を確認し、納得できたら進む——このスタンスが、訪問看護 処遇改善2024の恩恵を着実に受け取るための第一歩です。
参考文献・引用データ
本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。
- 【厚生労働省】介護人材確保に向けた処遇改善等の課題
- 【厚生労働省】介護保険最新情報 Vol.1454
- 【厚生労働省】「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)されます
- 【厚生労働省】介護職員の処遇改善について
- 【厚生労働省】令和6年度介護報酬改定の主な事項について
- 【介護経営ラボ】訪問看護の処遇改善加算:算定・計算方法と運営指導対策
- 【厚生労働省】介護人材確保に向けた処遇改善等の課題(実態調査結果)
- 【株式会社カーネル】訪問看護の処遇改善加算(2026年)と令和7年度賃上げ補助金の解説
- 【日本看護協会】2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査
- 【カイポケ訪問看護マガジン】2026年度改定対応 訪問看護の介護職員等処遇改善加算の解説
- 【厚生労働省】令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)
- 【厚生労働省】令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】
- 【関東信越厚生局】ベースアップ評価料に係る賃金改善計画書及び賃金改善実績報告書について
- 【厚生労働省】令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について
- 【日本看護協会】協会ニュース2024年5月号 令和6年度診療報酬改定「ベースアップ評価料」の新設

