訪問リハビリを辞めたいのは職場のせい?適性の見極め方

看護師
訪問リハビリの仕事に疲れを感じながら車中で考え込む日本人理学療法士

一人で利用者宅へ向かう車中、ふと「もう限界かもしれない」と思ったことはありませんか。

月間件数のプレッシャー、家族対応の難しさ、同僚に相談できない孤独感。訪問リハビリを辞めたいと感じる理由は、人によってさまざまです。でもその気持ちを、誰かに責められる必要はありません。

辞めたい原因を「職場の問題」と「仕事自体の問題」に切り分ける

感情のまま転職すると、環境が変わっても同じ悩みを繰り返すリスクがあります。この記事の目的は一つ。「今の事業所が合わないのか、訪問リハビリという働き方そのものが合わないのか」を見極める判断軸を提供することです。

一つ、参考になるデータがあります。介護労働安定センターの令和6年度調査では、PT・OT・ST等の離職率は9.7%。看護職員の15.9%、訪問介護員・介護職員2職種計の12.4%と比べると低い水準です。

ただし、「数字が低いから我慢すべき」ではありません。合わない環境は見直す価値があります。一方で、職場を変えても構造的な厳しさが残るケースもあります。

具体的な判断基準を、次の章から見ていきましょう。

訪問リハビリを辞めたいと感じる前に──離職率と労働環境を数字で確認する

訪問リハビリ職種の離職率データを確認するビジネスシーン

先ほど触れた離職率データを、もう少し詳しく見てみましょう。理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)を含むリハビリ系職種の令和6年度離職率は9.7%、採用率は16.3%(介護労働安定センター『令和6年度介護労働実態調査』n=2,194)。全産業の令和6年離職率14.2%(厚生労働省『令和6年雇用動向調査』)を下回り、定着しやすい傾向があります。

しかし、人手不足は深刻です。

区分 人手不足と感じる事業所割合
訪問介護員 83.4%
全体平均 65.2%

(出典:同実態調査)

人員が薄い事業所では、一人あたりの月間訪問件数・単位数の負担が増しやすい傾向があります。訪問リハビリ事業所の収益は稼働率に直結するため、損益分岐点(BEP)を維持するための件数目標が個人に課される場合があります。インセンティブ契約(歩合制)と組み合わさると、精神的プレッシャーがさらに高まる可能性があります。

事業所によっては、固定給比率を高めた給与設計やキャリアラダーの整備など離職防止(リテンション)策に注力しているところもあります。転職先を選ぶ際は、給与構造の確認が重要な判断軸の一つです。なお、リハビリ系職種の2024年時点の平均年齢は34.1歳(厚生労働省『医療機関を取り巻く状況について』)と若く、流動性のある世代が中心です。

訪問リハビリを辞めたいと思ったら──制度の仕組みと負担の正体を把握する

訪問リハビリは介護保険法および健康保険法を根拠とする制度サービスです。業務は次の構造で成り立っています。

  • 医師が発行する訪問リハビリテーション実施指示書を起点にサービスを開始する
  • リハビリテーション実施計画書を定期作成し、利用者・家族への説明義務がある
  • 居宅介護支援事業所ケアマネジャー(介護支援専門員)が調整するサービス担当者会議へ参加する

「臨床より書類・連絡調整が多い」と感じる負担感の多くは、この制度的な業務構造に由来している場合があります。

令和6年度改定が事業形態の選択を左右する

令和6年度の診療報酬・介護報酬改定では、訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問に対して▲8単位/回の減算が導入されました(厚生労働省『全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料 令和6年3月』)。訪問リハビリ専門事業所か訪問看護ステーション経由かで、収益構造・業務内容が異なる場合があります。転職先の事業形態を事前に確認することが重要です。

ADL維持等加算24時間対応体制加算の取得状況は、事業所の経営姿勢と利用者層を示す指標の一つです。地域包括ケアシステムにおいて訪問リハビリが担う役割を理解することで、制度面から転職先を評価する視点が得られます。

単独訪問の不安は「仕組み」で減らせる──医療リスク管理と遠隔指示系統

訪問リハビリ中にスマートフォンで医師へ遠隔相談する日本人作業療法士

訪問リハビリを辞めたいと感じる要因として多く挙がるのが、「急変時に一人で対応しなければならない孤独感」です。しかしこれは個人の能力の問題ではなく、事業所が整備している仕組みの有無によって大きく変わります。

よくある事例として、医療リスク管理プロトコルと医師・看護師への遠隔指示系統が確立している事業所では、単独訪問中でも即時相談が可能な体制が機能しており、孤立感が軽減される傾向があります。一方、未整備の事業所では個人判断への依存が高まりやすい傾向があります。

転職前に確認すべき「仕組み」チェックリスト

確認項目 ポイント
ICT活用・電子カルテ導入 訪問先からリアルタイムで記録・情報共有ができるか
直行直帰制度 毎日の事業所立ち寄りが不要か
年間休日数(120日以上等) 日数と祝日・お盆の扱いを確認
緊急時連絡体制 医師・管理者へ即時連絡できるラインがあるか

面接や職場見学でこれらを直接確認することが、転職後の後悔を避ける有力なステップです。「訪問リハビリを辞めたい」という気持ちの根拠が今の事業所固有の問題なのか、仕事そのものへの違和感なのかを、この「仕組み」の有無から判断してみてください。

参考文献・引用データ

本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。

この記事の監修者
株式会社ゴルディロックス
代表取締役 / 理学療法士龍嶋 裕二(Yuji Ryushima)

理学療法士として大学病院にて超急性期から緩和ケアまで多岐にわたる臨床を経験。2013年に独立し、株式会社ゴルディロックスを設立。 現在、リハビリ特化型デイサービスや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等複数の事業を経営。またクリニックの運営やプロアスリートから子供の身体発育までをサポートするパーソナルトレーナーとしても活動中。医学的知見に基づいた地域密着型のヘルスケア環境づくりを牽引している。

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