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求人票に並ぶ「残業ほぼなし」「直行直帰OK」という言葉。病院勤務で毎日のサービス残業に疲弊しているなら、その文字が目に飛び込んだとき、信じたいと思うのは自然です。
でも、こんな疑問も湧きませんか。
- 訪問後の記録はどこで書く?
- 移動時間は労働時間に入る?
- キャンセルが出たら給与はどうなる?
データで見ると、訪問リハビリの労働環境はどうなっているか
楽観的な答えを出す前に、まず数字を確認しましょう。
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、産業別「医療,福祉」の1日所定労働時間は7時間51分、週所定労働時間は39時間23分。全企業で完全週休2日制を採用する割合は65.5%まで上がっており、制度の土台は整いつつあります。
一方で、直行直帰や事業場外みなし労働時間制を採用する事業所では構造的に残業が出にくい半面、記録業務・計画書作成・当日キャンセルへの対応次第ではサービス残業化するリスクもあります。
実態は「事業所の仕組み次第」——その具体的な中身を次の章で解説します。
市場の事実:統計から見る労働時間の実態

先ほど触れた厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」を補足します。「医療,福祉」の1日所定労働時間7時間51分・週39時間23分(令和7年調査計)はあくまで「所定」の数値です。実際の残業実態を直接示すものではありません。
制度面では、事業場外みなし労働時間制の適用労働者が全規模で10.5%、みなし労働時間制全体で11.8%(令和7年調査計)。直行直帰が基本の訪問系サービスでは、使用者が労働時間を直接把握しにくいため、この制度が採用されやすい傾向があります。月・週単位で労働時間を調整する変形労働時間制も同様です。いずれも残業代の計算が複雑になりやすい点に注意が必要です。
比較として、中医協「令和7年度第5回入院・外来医療等の調査・評価分科会資料」(病棟看護管理者票・n=3,771・令和6年11月時点)では、「残業が長くなった」病棟が29.7%、「短くなった」が25.2%。これは病棟看護職員のデータですが、病院勤務では残業のばらつきが大きい実態が読み取れます。訪問リハビリへの転職を検討する際の比較軸として参考にできます。
制度の事実:なぜ訪問リハビリは残業が出にくい構造なのか
訪問リハビリは1日あたりの標準単位数が18〜20単位程度が目安です。介護保険の訪問リハビリテーション費(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問、20分以上)は1回293単位(令和3年度改定後)と設定されており、1日の訪問実績件数には自然な上限があります。夜勤・緊急入院対応が原則ないぶん、スケジュールが予測しやすい点が、訪問リハビリの残業が少ないとされる構造的な背景の一つです。
ただし、求人票を見る際は以下を必ず確認してください。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 固定残業代(みなし残業) | 何時間分含む?超過分の追加支給はあるか |
| インセンティブ制度(歩合給) | 件数連動型の場合、過多な訪問件数につながらないか |
| 1分単位の残業代支給 | 切り捨て計算でないか |
| 36協定 | 月の時間外上限は何時間か |
固定残業代は「月30時間分含む」と記載があっても、超過分が追加支給されないケースがあります。みなし時間を超えた分の扱いを必ず事業所に確認してください。
移動時間については、日本医師会総合政策研究機構「第3回診療所の在宅医療機能に関する調査(2025年)」(n=1,183・在宅医療を行う診療所のデータ)によると、自院からの最大移動時間が30分未満の診療所は約58%を占めます。訪問リハビリでも社用車・電動自転車・自家用車の選択と訪問エリアの密度が、実質的な拘束時間を左右する可能性があります。
ICT・現場完結型記録は残業をどこまで減らすか

訪問リハビリの残業で見落とされやすいのが、リハビリ記録・経過記録の入力時間です。帰社後にまとめて入力する運用では、訪問件数が少なくてもサービス残業が発生しやすい傾向があります。
日本看護協会「2024年度訪問看護実態調査」(n=1,879)では、看護記録システム・ソフトの導入が75.5%、訪問先でのスマートフォン・タブレットを用いた記録・報告が62.8%まで普及しています。これは訪問看護のデータですが、訪問リハビリでも電子カルテ・情報共有ツールによる現場完結型記録の普及が進む傾向があります。
厚生労働省「訪問リハビリテーションの現状と業務改善事例」では、テレビ会議の導入により1事業所合計でスタッフの移動時間が約400分削減された事例が紹介されています。ルート最適化との組み合わせが、残業発生を抑える可能性があります。
ただし、システムを導入しても入力ルールが整っていなければ持ち帰り残業は残ります。事務作業の分業化(クラーク配置)が進んでいる事業所では非訪問業務の工数が少ない傾向がある一方、体制が整っていない場合は書類作成が残業の主因になりやすい点に注意が必要です。
現場の事実:それでも残業が発生する典型パターン
訪問リハビリの残業は「訪問そのもの」より非訪問業務に集中しやすい傾向があります。よくある事例として以下が挙げられます。
- リハビリテーション実施計画書・報告書作成:法定書類のため省略できず、勤務時間内に作成枠が設けられていない場合がある
- サービス担当者会議への出席:利用者側の日程に合わせる必要があり、時間外出席になりやすい場合がある
- 多職種連携(ケアマネジャー・主治医への連絡):訪問の合間に電話・FAX対応が重なると工数を圧迫しやすい
- 営業活動(居宅介護支援事業所への挨拶回り):勤務時間外の活動として求められるケースがある
- 当日キャンセル時の給与保証・振替対応:補填業務や給与調整が別途発生する場合がある
これらが勤務時間内に収まる体制(事務分業・直行直帰のルール整備)を整えているかどうかが、求人票の「残業なし」が実態と一致するかの分かれ目です。面接では「書類作成は勤務時間内に完結するか」「サービス担当者会議は勤務扱いか」を具体的に確認することをお勧めします。
残業の少なさは今後も続くか
続きやすいシナリオとして、日本看護協会「2024年度訪問看護実態調査」(n=1,879)では看護記録システム導入率が75.5%、訪問先でのタブレット等を用いた記録・報告も62.8%に達しています。訪問リハビリでも同様の傾向でICT化が進めば、現場完結型記録が標準化され、残業が発生しにくい環境が広がる可能性があります。訪問エリアを絞り込む事業所では、移動時間の短縮にもつながる可能性があります。
一方、リスクシナリオも存在します。医療・福祉の平均賃金は月306.4千円で、全産業平均349.9千円を43.5千円下回ります(令和6年賃金構造基本統計調査、日本理学療法士協会政策要望書より)。訪問件数を詰め込む事業所では、計画書作成・多職種連携・営業活動が非訪問業務としてサービス残業化する可能性があります。訪問リハビリの残業の少なさと給与水準はトレードオフになりうる点も把握しておいてください。
訪問リハビリの働き方に向いている人・向いていない人
向いている人
- 自分でスケジュールを組み、裁量を持って動きたい
- 直行直帰で通勤負担を減らしたい
- 記録のICT化・タブレット入力に抵抗がない
向いていない人
- 単独訪問より同僚に相談しながら進めたい
- 計画書・報告書などの書類業務が得意でない
- インセンティブより固定給の安定を最優先したい
よくある質問
Q1. 訪問リハビリは残業が少ない分、給与は下がりますか?
医療・福祉の平均賃金は月306.4千円で、全産業平均349.9千円を下回る水準にあります(令和6年賃金構造基本統計調査)。インセンティブ制度(歩合給)を導入し、訪問件数に応じた変動給を採用する事業所もあります。件数次第で収入が変動する可能性があるため、基本給と歩合の内訳は必ず面接で確認してください。
Q2. 訪問リハビリの記録業務や移動時間は残業になりますか?
事業場外みなし労働時間制の採用有無、1分単位の残業代支給規定の有無、現場完結型記録の整備状況によって実態は分かれます。帰社後にまとめて入力する運用が続く事業所ではサービス残業化しやすい傾向があります。「訪問先での記録完結が可能か」「移動時間は賃金計算に含まれるか」を面接で直接確認してください。
Q3. 離職率や平均勤続年数はどうですか?
公的統計に訪問リハビリ単独の明示データは乏しく、断定は避けます。介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(n=317)では、PT・OT・ST等の直前の仕事が医療関係53.0%・介護関係28.7%と、医療機関からの転職者が多い傾向があります。職場ごとの体制差が大きいため、在籍スタッフの平均勤続年数を個別に確認することが有効です。
アクションプラン:次の一歩

求人票と面接で以下を確認してから判断してください。
| 確認項目 | 具体的に聞くこと |
|---|---|
| 固定残業代 | 何時間分含む?超過分の追加支給はあるか |
| 36協定 | 月の時間外上限は何時間か |
| 当日キャンセル | 振替対応・給与保証の有無 |
| 記録のICT環境 | 訪問先でのタブレット入力は可能か |
| 非訪問業務 | サービス担当者会議・営業活動は勤務時間内か |
これらを確認して納得できたら、次のステップに進んでください。訪問リハビリの残業実態は事業所によって差があります。「残業なし」の文言を鵜呑みにせず、仕組みを一つひとつ確かめてから判断することが、後悔のない選択につながる可能性があります。
参考文献・引用データ
本記事で使用している数値・制度内容・市場動向に関する情報は、以下の公的資料および信頼性の高い調査データを参照しています。
- 【厚生労働省】令和7(2025)年就労条件総合調査の概況
- 【リハビリテーション専門職団体協議会】理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の処遇改善等に関する共同記者会見資料
- 【日本理学療法士協会】令和7年度 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の処遇改善に関する政策要望書
- 【介護労働安定センター】令和6年度 介護労働実態調査 結果の概要
- 【厚生労働省】訪問リハビリテーションの現状と業務改善事例
- 【厚生労働省】令和7年度第5回 入院・外来医療等の調査・評価分科会 資料
- 【日本看護協会】2024年度 診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査
- 【厚生労働省】介護保険最新情報 Vol.1454 令和7年12月25日(介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業)
- 【厚生労働省】訪問看護の概況、現状と課題及び論点
- 【日本訪問看護財団】訪問看護の現状とこれから 2025年版
- 【日本医師会総合政策研究機構】第3回 診療所の在宅医療機能に関する調査(2025年)

